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ひとつ、願いが叶うなら 〜明日の記憶〜


遂にやって来た、望んでもいない金曜日。

見送りに行けば、海斗はかなり驚いてた。

「なん、で?」

「当たり前でしょうよ。都内だよ?なかなか会えないじゃん」

「そう、だけど……」

「海斗、大好きだよ。ずっと、いつまでも待ってるから」

海斗に思い切り抱きついた。

「大好きだよ。大好きっ。いつまでも待ってるからね」

「うん。必ず、また会おうね。絶対、帰って来る…」

そう言った海斗の声は、大分震えてた。

「珠希」

「海斗……んっ」

体を少し離されたと思えば、あの時と同じ感覚が、唇に
帰ってきた。

「か、いと…」

少し離れた海斗の頬には、大粒の涙が伝っていた。

今にも落ちそうな涙の雫をすくい、透き通るような
白い頬に残る涙の筋をそっと拭った。

それを、海斗もやってくれた。

こんな私の涙を、拭ってくれた。

綺麗な、長い指で。

お互いの涙の跡が消えた頃、海斗は最後に、爽やかで
可愛らしい笑顔を残して、沢山の荷物と、さっきまで
視界に入ってなかったご家族と電車に乗り込んだ。

私も、海斗の素敵な笑顔に、最高の笑顔を返した。

可愛さなんて、求めてない笑顔を。

ただ、精一杯、笑った。

電車が動き出した時に、涙はまた溢れた、けど。


<2016/08/30 12:27 秋の空>消しゴム
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