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ひとつ、願いが叶うなら 〜明日の記憶〜


里咲から意味深な言葉をもらった次の日。

私達は今日もこの公園に居た。

私と里咲の間に会話は特になく。

私はそんなに気にしてないけど、里咲は結構気にしてる
みたい。

「り〜さっ、気にしないで?私は、海斗にも、大希にも?
何もしないから」

「みき、ちゃん……」

「何?」

「何でもない」と誤魔化す里咲に、「そっか」と納得した様子を見せて自販機の方へ向かった。

昨日、結局お金返さなかったからね。

なんて考えながら昨日もらった物と同じ物を買った。

その時、足首辺りに何かが当たる感覚が。

下を見てみれば、一つのサッカーボールが。

「すみませーん!」

「あっ、はいよっ」

適当に投げた、思っていた場所とは程遠い場所へと飛んで行ったサッカーボールを追いかける男の子。

本当、ごめんね。

何となく恥ずかしい気持ちになりながら三人の居るテニスコートへ。

そして昨日やられた事を里咲にやる。

里咲は昨日私がした事をする。

「珠希ちゃん?」

「暑いでしょ、飲んで?」

「あり、がと……」

やっぱり何だか不自然な私達。

昨日のように一口飲んだ時。

今日も同じように飛んでくるテニスボール。

私は上手にそれを受け取り、大希の顔スレスレの所を
狙ってそいつを思い切り投げた。

こういう時はコントロール抜群で。

「ヤッ、べ……」

面白い程素直にビビる大希。

暫くしてから再び鳴り響くあの音。

私はこの音が大好き。

そんな音に耳を澄ませていた時。

「はい」

隣からいつも通りの里咲の声が聞こえた。

「はい?」

「お金」

「良いから。昨日、返せなかったし」

そう言ってお金の乗った里咲の綺麗な手を握らせた。

「本当、ごめん…」

「そんなに気にしないでよ。どうしたの?何か変だよ?」

その言葉に、「何でもない」以外の言葉は返っこなかった。

やっぱり少し不自然な雰囲気は消えず、暫くそのままで
居た。

「どうした?」

優しい声に顔を上げる私達。

そこには海斗と大希が居た。

「何が?」

「何か変だよ?」

さっき私が言ったままの言葉が。

「何でもない」

里咲の気持ちが分かったような気がした。

確かにこうとしか答えられない。

「まぁ良いけどさ。二人には仲良く居て欲しいから。
何かあったら言ってな?」

大希の珍しい言葉に笑ってしまった。

「ちょ、何。超失礼なんだけど」

「そんな事ないわよ?ただ面白いから笑っただけ」

「それが失礼なんだよ。何故今、俺のあの言葉に笑った」

「だから、大希にあんな優しい言葉は似合わないのっ」

ちょうど盛り上がってきた頃、海斗の笑い声が聞こえる。

私達も大人しく黙る。

これがこの件の終わりを告げる、学校で言えばチャイム
みたいなもの。

「よしっ。じゃあ、帰りますか」

海斗が私と、その隣に立つ大希の肩に手を乗せた。

「えっ、もう?」

そう言って振り返れば、海斗の可愛らしい笑顔が。

「大希が犯人になる前にね」

「いやぁ、今日は狙ったろ」

「今度やったら、当てるわよ?」

「その一回止めるとこが怖い」

私って結構恐れられてる感じなんだね。

本当、里咲が憧れだよ。

男の子にはちゃんと普通に女の子として見られるし。

大人しいから、先生に色々頼まれたりはしてるけど。

私は男の子には当たり前のように友達扱いだし。

初めて話すような人も。

結構普段から騒いでる感じだからか先生もあまり頼み事はされないかな。

「そう言えば、いつだっけ?」

「何が?」

「何か、大会みたいな」

「そんな最近にあったっけ?」

「無かったっけ」

「多分……」

首を傾げる海斗。

その隣でバカにしたような笑みを浮かべる大希。

あると思ったんだけどな。

夢でも見てたかのかも。

「はあ〜、高校かぁ。誰か好きな人でも居んの?」

その言葉の後、大希は余計な事を続けた。

「まぁ、珠希は居ないだろうな。似合わないし」

思い切り背中を叩いてやった。

結構な手応え。

「いっつぁ……」

「あ〜の音は痛いよ」

「で?誰か居ないの?里咲なんか秘めた恋心とか持って
そうだけど」

「えっ…」

少し頬を赤く染める里咲。

本当に女の子らしくて。

「居る顔だ。海斗?」

「やだな、変な事言うなよ。期待しちゃうじゃん」

まさかの両想いってやつじゃん。

青春だねぇ。

羨ましい。

「誰も、居ないよ……」

その言葉と一緒に恥ずかしそうに下を向く里咲。

「ふ〜ん」

「はいはーい!恋のお話は終わり」

「モテないからって。そういう話聞くのが辛いんだ?」

もう一度大希の背中を叩いた。

毎回初めてのようなリアクションが返ってくる。

これがまた面白くてやめられない。

「うぅ、おかしくなっちゃうから……」

「もうなってんじゃん」

私も叩かれた。

流石に加減してくれたけど。

日々あんな重いラケット振ってる人に本気でやられたら。

それこそおかしくなる。



今日の帰り道は、とても明るい雰囲気だった。

私達、三人は。

<2016/08/28 18:10 秋の空>消しゴム
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