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ひとつ、願いが叶うなら 〜明日の記憶〜


後ろで小さな足音が聞こえる。

それは、とてもゆっくりと。

何となく近付いてる気もする。

誰だろう、なんて思った時には、目を塞がれた。

「だぁれだ?」

「え、里咲?里咲、隣に居たよね?」

「お前はバカか。大好きな大希くんだろーが」

そんな、普段なら最高にムカつく大希の声と同時に、視界が自由になった。

「あらやだっ、大希くんの事が大好きなのは私よ?」

里咲、前も思ったけど、本当に積極的になったね。

「あぁ、里咲は俺が大丈夫。気持だけ受け取っとくよ」

「珠希ったら、大人気じゃん。良いなぁ。少しで良いから分けとくれ。そのモテ度」

「やだっ、大希本気?」

「お前、本っ当にバカだな」

振り返って聞けば、大希は私の顔を覗き込むようにして
言った。

「ちょ、バカぁ!」

一気に恥ずかしくなって、ベンチを挟んで後ろに立つ
大希の腕を思い切り叩いた。

「いった、右腕負傷したわ」

「知らないわよ!そんなもん」

一瞬明るい雰囲気に包まれた私達だけど、やっぱりすぐに暗くなる私達の表情。

やっぱり、海斗の事は離れないよ。

大希にとっては大切な親友。

里咲にとっては今も尚、大好きな人。

私にとっては、大好きな彼氏。

そんな人が、遠い場所へと行ったの。

そりゃ、明るくもならない。

「あ、珠希。海斗に電話した?」

大希の優しめな声に、首を振った。

「そっ、か。もし、珠希が海斗の声を聞く余裕が出てきたら、掛けてやれ?」

「えっ、大希は?大希は、掛けたの?」

「いいや?」

特に返事はせず、再び携帯を手の中へ。

けどやっぱり、迷惑ではないか、そんな考えが頭を過ぎる。

「掛けて、迷惑じゃ、ないかな……」

「待ってんじゃねぇか?海斗。珠希から、連絡が来るのをさ」

「まだ、忙しいんじゃないかな…」

「そういう時こそ、聞きてぇもんだろ。大好きな人の、
声ってのはよ」

「電話越しだし……」

「本当にバカだな。辛かったり、忙しい時。まぁ、
余裕のねぇ時だな。そういう時は、逆にな?そういう、
機械通した声が、堪んねぇんだよ」

機械通したって。

怪しい人みたいじゃん。

「押せねぇなら押してやっけど」

「ヤメてっ!」

里咲の時のように携帯を大希から離した。

「ハハッ、そんなムキんなんなよ」

「だっ、て。話したい事も、決まってないし。けど、
掛けたくて……」

「なら素直に言えば良いじゃん。声が聞きたかったって。恋愛のドラマとかであんじゃん?」

ドラマと現実は違うでしょうよ。

本当、ドラマみたいに行くと思ってたらとんでもない目に遭う。


<2016/08/30 17:24 秋の空>消しゴム
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