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ひとつ、願いが叶うなら 〜明日の記憶〜


君を呼ぶ、コール。

真昼の、青い空の下で、響いてる。

『どうした?』

そう、電話の向こう側で聞こえる声は、海斗のものでは
ないけど。

「だ、だい、き……」

『え、珠希?』

「あ、いや……」

『何?』

「あ、の、練習、みたいな」

『はぁ?』

ダメだこれ。

怒られる。

『そんなに緊張する事ねぇよ。大丈夫だから。海斗だろ?ずっと待ってっから。珠希から、連絡来るの。きっとな』

けど、大希は違った。

「ヤメて。ますます掛けられなくなる」

『それは困るなぁ』

あれ、でも私も、大希も。

何でこんなに必死に掛けようとしてるんだろう。

『まぁ、無理に掛ける必要もないし。色々落ち着いたら、掛けてやれ』

「うん。ありがと…」

『俺ら公園に居るけど、どうする?』

「えっ?」

『来たかったら来な』

「うんっ!」

それから挨拶もなく一方的に電話を切り、公園に向かって走り出した。

体力、やる気、持久力。

何一つ持っていない私でも、今は、今日は。

走れた。

「大希っ!」

「お〜、来たっ」

大希に飛びつき、安心したのか涙が溢れた。

私の涙腺はどうなってしまったのだろう。

「珠希?何泣いてんの」

「大希に会えた!」

「俺にはいつでも会えっけど」

「私も居るよ?」

里咲の可愛い声。

「私、掛ける」

「本当に?」

「うん。今なら、掛けられる気がする」

「そっか。頑張れ。海斗くんも待ってるよ」

私は頷き、いつの間にかバッチリ準備されていた携帯を
耳に当てた。

再び、晴れた昼間の空の下、誰かを呼ぶコールが響く。

その頃には、涙も枯れたように止まっていた。


<2016/08/30 18:07 秋の空>消しゴム
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