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夢が叶う その時に


美桜と異常に急接近したあの日から、初めての土日。

俺は何とも幸せな事に、美桜と居る。

あの日の事はなかったかのように、ただの仲の良い友達、という感覚で。

でも、これくらいじゃないと俺がもたない。

「夏海は?好きな人とか居ない訳?」

ポテトを咥え、右手には携帯、と、いかにも高校生らしい
姿の美桜が聞く。

「居ないなぁ」

「ふ〜ん」

「美桜、最近良く聞いてくるけど、何かあったの?」

そう言う夏海は、美桜以上に高校生らしい。

そういうのが、良い意味で似合ってる。

「別に?ただ好きな人とか居たら楽しそうだなぁって?」

「分かるう〜!」

俺は、そんな二人をポテトではなくストローを咥えて見ている。

こんな所、最後に来たのはいつだっただろう、なんて
考えながら。

「で?零は好きな人、居ないの?」

「えっ、うん」

「へぇ~。美桜とか似合いそうだけど。私と違って美桜は
可愛いからさっ。零みたいなカッコイイ人が似合うのよ」

「私が零と?もったいない もったいない」

本当、こんなに嘘が上手いとは。

俺の、二つのワガママを聞いてくれた美桜。

この事を言わないで、と、その理由は聞かないで、という
ワガママを。

俺が美桜と付き合った事が知られたら。

学校中は、恐らく、大騒ぎ。

それを、あの方々が聞けば。

俺はとても美桜とは一緒には居られない。

それと同時に、美桜には大きな迷惑を掛ける事になる。

それだけはどうしても避けたかった俺は、あの二つの
ワガママを聞いてもらった。

その代わり、とも言わないけど、俺は榊さんを美桜、
夏海さんを夏海と呼ぶように、と言われた。

「帰る?」

美桜の声で机の上を見れば、ポテトたちは綺麗に姿を
消していた。

「先出てて良いよ」

そう言ってお盆と席を立った時。

「ファーストレディーってやつだね」

夏海の、小さくも大きな間違いに笑いそうになった。

「レディーファーストね。凄い人になっちゃったよ」

言葉は怖いものだと、改めて実感した。


お店を出れば、美桜が俺の荷物も持っていてくれた。

「お疲れ。はいっ」

「置いておいて良かったのに」

「盗られんぞ?」

「大した物は入ってないけど。あ、ありがとね」

今回も素敵な笑顔で首を振る美桜。

この笑顔は、周りの人、見る人を幸せにするものだった。

この笑顔を、消したくなかった……

<2016/09/03 15:09 秋の空>消しゴム
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