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夢が叶う その時に


翌日、俺は美桜と近くの海に居た。

そこに夏海は居ない。

緊張が…、なんて思っているのは、俺だけらしい。

美桜はいつも通りにしている。

「零」

「ん?」

美桜の方を向けば、ピシャッ、という高い音と共に、顔に
水がかかった。

「んっ」

「冷たい?」

「分からない」

「まぁ、結構安全な温度だよね」

綺麗な水の中に見える美桜の手。

白いその手が、眩しい太陽を反射して光る水の中で更に
白く見える。

その隣で水に触れてみた。

「冷たくもないよね」

「うん」

「綺麗だね」

隣で立ち上がる美桜に合わせるように立ち上がれば、
青く輝く、綺麗な海が視界に広がった。

「近くで見るとあんなに透明なのにね。こんなに青く」

「ねっ」

「零ってさ、何で自分の事話さないの?」

隣から、明るい声でそんな言葉が聞えた。

「えっ?」

「だあって、私達が聞いた事には答えてくれるけど、
自分からは絶対何も言わないじゃない?」

「そんな事ないよ?」

それから、静かな水の音が響く時間が、暫く続いた。



「綺麗だね」

自然になってきた沈黙を破ったのは美桜。

その頃には、青かったはずの海を夕陽という太陽が、
オレンジ色に輝かせていた。

「そうだね」

そうは言ったけど、その太陽に照らされた美桜の方が、
綺麗に見えてしまった。

それを眺めていると、何だか恥ずかしくなってきて
オレンジ色の海へと視線を逃がした。

水平線に沈む、大きな太陽。

普段は、時間か両親のうちのどちらかから電話が掛かって
来ている事を知らせる画面しか映さない、俺のこの携帯が
今は、目の前に広がるこの景色を映していた。

「カシャッ!」

「わっ、美桜?」

隣、ではなく斜め後ろ辺りを見れば、美桜が、構えていた
携帯を覗いていた。

「撮れば?」

可愛い所あるんだね、と笑う美桜。

「美桜は?」

「私にはそんな女の子らしい所ないから」

そう言いながら、さっき撮ったのであろう綺麗な海の画像を見せる美桜。

その顔にも、可愛らしい笑みが浮かんでいた。


<2016/09/03 16:38 秋の空>消しゴム
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