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夢が叶う その時に


この日も、教室に西陽が射し込んだ。

「零くんっ」

明るい声と同時に、後ろから抱きつかれる。

「な、中越、さん…」

「今日一緒に帰ろっ」

「は、はい……」

美桜に、ごめんね、という思いを込めて視線を向けた。

その意味はちゃんと伝わり、美桜は首を振ってくれた。

いつもの、あの素敵な、綺麗な笑顔で。

「わっ、中越さん…」

美桜の笑顔に癒されていると、腕を引かれ、教室を飛び
出した。

「んっふふ、やっと会えたよ。零くんにっ」

踊り場まで駆け下りた所で、凜花に思い切り抱きつかれる。

「凜花?帰ろう?」

「そうだねっ。零くんの家、行きたいな?久々だし……」

「はい、良いですよ…」

やった、と控えめに喜び、再び腕を引く凜花。



そして、久々に俺以外の人が居るこの部屋。  

「零く〜ん、あの子とは〜、どんな関係なの〜?」

凜花の女の子らしい声が言う、あの子。

美桜の事だろう。

「友達、だよ…」

「へぇー。それで家まで行くんだ」

さっきまでの声とは、まるで違う凜花の声。

その声と、やたら合わせてくる目が怖くて、彼女から目を逸らした。

「分かってると思うけど、私達の将来は決まってるのよ?」

「はい…」

「別に良いの。零くんがどんな女の子と居ようと。将来の
事を、忘れないでもらえればね」

凜花の、低く感情の分からない声で、そんな言葉が静かな部屋に響く。

「あの、用は……」

「あらやだっ、零くんったら!そんな事考えてないよ〜。
最近帰って来たんだよ?ただ零くんと居たかっただけっ」

そう、女の子らしく言って、また抱きつく凜花。

「小学校の頃から一緒だもんね」

「そう、だね…」

「でも、中学に上がる頃だよね。凜花が、海外に行っちゃったの。それから零くんとは会えなくなった。ずっと会いたかったよ」

その言葉には何と答えて良いか分からず、黙ってしまった。

「零くんは、凜花の事どう思ってるの?」

少し苦手、だなんて言える訳もなく、大切だよ、と答えた。

「凜花は、零くんの事好きだよ」

こんな話、いつか美桜ともした気がする。

本当に好きな、本当に大切な、美桜と。

「零くんは、凜花の事。好きとは思ってくれないの?」

俺は前から、凜花のこういう所が苦手だった。

そんな俺に、更に続ける凜花。

「零、分かってるよね?零は、凜花と今後、未来を。
生きていくの」

「もちろん、分かっております……」

「違うよね?あの子の事、好きなんじゃないよね?凜花
以外の女の子の事、見てる訳じゃないよね?」

話がおかしな方向へと進みそうだけど、俺と凜花は決して
付き合っている訳ではない。


俺達はただ、将来を決められた、そんな二人。

<2016/09/04 20:42 秋の空>消しゴム
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