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夢が叶う その時に


凜花の本心も知れ、いつの間にか距離が遠くなってしまっていた美桜との距離も今まで通りになり、安心していた、その時だった。

久々の美桜の部屋。

夏海も、居るけど。

俺はこの三人で居る時間が好きだった。

そんな、穏やかな部屋に鳴り響く携帯の着信音。

三人で一斉に携帯を確認する。

もちろん鳴っていたのは俺の携帯で。

「ちょっと、ごめん」

二人が笑顔で首を振ってくれた事を確認し、廊下に出た。

深めの呼吸をしてから電話に出る。

「はい、零です」

電話の向こうから聞こえてきたのは、意外な人物の声だった。

「せ、瀬楽さん?」

彼は、うちの執事。

凄く良い人で、俺は大好き。

見た目はチャラチャラしてそうだけど。

『零様、早急にお戻り下さい』

名前に『様』を付けて呼ばれる時点で、瀬楽さんが相当
慌てている事は分かったけど、つい、何で?と言ってしまった。

『お話はその後です。一旦失礼致します』

珍しく瀬楽さんが一方的に電話を切った。

何が起こったのだろうか。

「零?」

「わっ」

部屋に戻ろうとしたら、二人が立っていた。

「ど、どうした?」

「誰から?」

意外な質問に、関係のある人間を片っ端から思い出して
いく。

「あっ、親?うん」

「大丈夫?用件は?」

それ、普通聞かないよね。

「えっと、妹が、熱出した、って…」

本当、なんて嘘が下手なのだろうか。

妹なんて居ないし。

二人が家の事を何も知らない人で良かった。

「マジで?早く帰りなよっ」

そう、慌てたように言って俺の荷物を取ってくれた夏海。

ありがとう、架空の妹。

そして夏海、ごめんね。

「ありがとう。お邪魔しました」

階段を下りた所で、瀬楽さんに電話を掛ける。

呼び出している間に、靴を履き、玄関の外へ。

『はい、瀬楽です』

「瀬楽、何があった」

『零様、今どちらに』

「今向かってる。少し掛かるから、今の内に何があったかだけでも教えて欲しい」

『かしこまりました』

その言葉の後、瀬楽さんが俺に連絡を入れるまでの事が
話された。

「はっ!?」

それを全て聞き終わる頃には、家の前に居た。

『ですので、お急ぎ下さい』

「もう急いでるよ。もう着くから、待ってて」

家の、洋風の門の前で、肩で息をしながら電話の向こうに居る瀬楽さんに、途切れ途切れにそう言った。

もう、着いては、いるけど。

なかなかその中へ入れない。

その時。

『ずっと、一緒に居てよ?』

いつか、美桜が言ってくれたその言葉に、門を開ける力をもらった。



全てを敵に回す、覚悟も。

<2016/09/05 18:50 秋の空>消しゴム
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