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夢が叶う その時に


この日も、空っぽのまま終わりを迎えようとしてる。

窓の外は真っ暗。

その真っ暗で真っ黒な空に向かって降り積もる、真っ白な雪。

私の、零への思いのように。

空まで、届きそうだよ。

零への、この思い。

空までは届いても、その更に上に居る君には、届かないんだよね。

自分から言ったくせに、心では、今も零を求めてて。

日々は決して、楽しいとは言えないものに変わって。

本当、バカみたい。

自分で嫌いって言ったのに。

大好きな人に、嫌いと。

未だに消せてない、零の連絡先。

いつ交換したか、そんな事は覚えてない。

そんな事より、もっと前の。

初めて話した、あの日の事は。

今でもはっきり覚えてる。

初めて零を呼んだ呼び方。

南城くん。

馴れ馴れしすぎる。

おぼっちゃま相手に。

名字にくん付けとか。

なんて贅沢な女なんだろう。

零、彼は今、私を少しでも求めてくれてるかな。

私は、君の事だけを考えて終える日々を過ごしてるよ。

会いたくて、仕方のない日々を。

この季節は寒くて、君の温もりが恋しくなる。

上の方から、優しく抱きしめて欲しい。

そんな事、一度もなかったから。

人生初の恋。

こんなふうに終わるとは思ってなかった。

もう、零と話す事もないんだろう。

「美桜?」

そんな声で、やっと現実に帰って来る。

いや、ある意味あっちのほうが現実なんだけど。

「夏海…」

そう言えば、来てたんだっけ。

「ごめん、帰るね」

「待って!」

その声に振り返れば、夏海は僅かに笑みを浮かべていた。

「もう少し、話さない?」

明日も休みだし、と、半強制的に居る事になってしまった。

飲み物まで、渡されて。

「ねっ?良いでしょ?」

「良い、けど。夏海、良いの?」

「夏海ダメで言っちゃダメでしょ」

夏海の、ふざけたようなその言葉に、自然と笑みが溢れた。

夏海も、いつものように笑ってくれた。

その夏海は、ミニテーブルを挟んで私の前に座り、指を
さされたから私も座った。

少し重い沈黙が流れる。

「また、一緒に居てって、言ったら零、何て言うんだろうね」

更に重くするとは思ったけど、私はその言葉で沈黙を破った。

「どうだろうね。まぁ、凜花さん次第じゃない?」

夏海のその言葉に少し驚き、顔を上げて夏海を見た。

夏海も少し驚いてるような表情を浮かべている。

「だってそうじゃん。零が美桜を嫌いになる訳ないでしょ?あとはやっぱそうだよ。凜花さん次第」

夏海の口から明るく出されたその言葉に、私が出したのは涙だった。

「そう泣くなよ。そっちからフッといて」

「だって。私、零なんかと居ちゃダメでしょ。あっちは
婚約者が居るんだよ?」

「そうかも知んないけどさあ。それ言わなかった零もどうよ」

夏海ったら、結構ヒドい事言うんだから。

「ムカついた?」

「え?」

「今の私の言葉に、ムカついた?」

少し違う気もしたけど、何も感じなかった訳でもないし
頷けば、やっぱり好きなんだね、と夏海は笑った。

意味が分からず、ただ夏海を見つめた。

「ハハッ、だってさ。好きな人の事あんなふうに言われたらムカつくっしょ?何となく美桜の本心が知りたくてさっ」

恥ずかしくて目を逸らせば、夏海は、ごめんごめん、と
笑った。

そんな夏海が可愛くて、私も笑った。

一人だと、もちろん寂しいし、会いたくて堪らなくなる
事もあるけど、夏海が居れば、こんな時もやり過ごせると
思った。

けどやっぱり、私には変わらない願いがある。

零が中越さんと幸せになるという事、それを、強く。


<2016/09/06 19:10 秋の空>消しゴム
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