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夢が叶う その時に


秋の冷たい風が吹く、夕陽に照らされた放課後の屋上。

秋の風に髪を靡かせ、私は凜花さんと向き合うようにして
立っていた。

昼休み、凜花さんに話があるから、と言われ、ここで会う事は決まっていた。

けどなかなか話し出さない凜花さん。

冬目前の冷たい風が、頬を冷やして感覚をなくす。

「あのさ」

良くない話が始まる予感は、昼休みに呼ばれた時点で
してた。

けど、いざこうして話し出されると、緊張が走る。

「お願いだから、南城と関わらないで」

いきなり言われた、その言葉。

意味が分からずにいると、それを悟った凜花さんの表情
から苛立ちが見受けられた。

「貴方、知ってるわよね?私と南城の関係」

「婚約、者…」

言いたくない言葉を、涙を堪えながら呟いた。

その声は凜花さんに伝わったらしく、そうよ、と低い声が
返って来た。

「知ってて、何でまだ居るの」

「え?」

「『え』じゃないわよ。私と南城の関係を知ってて、何でまだ居るのって聞いてんの」

この人、何か誤解してる。

私は、零とは。

もうとっくに別れたし。

今も、あの時も。

傍に、隣に居たくて仕方がない。

話がしたくて。

そんな中、別れた。

「南城の中から消えてっ」

「はっ?」

「あんたのせいよ。あんたのせいで、南城はまともに物事を考えられなくなってるのっ!」

物事?

零は何を考えなきゃいけないの?

そしてそれは、私とどんな関係があるの?

「私と南城は、もう結婚が決まってるのに。あんたが南城を誑かすからっ!」

「た、たぶ……」

私、相当悪い人になってるじゃん。

言い訳させてもらうと、零が社長令息だなんて事知らな
かったし。

しかも、私は零を騙したつもりも、惑わしたつもりも
ないし?

「だってそうでしょ!?南城が私以外の女を見る訳なんて
ないの!」

それを貴方が…、と弱々しく繰り返しながら泣き崩れる
凜花さん。

この人は私をどこまで嫌な人に仕立て上げれば気が済む訳?

本当、この人無理。

何考えてるか全く分かんないし、言わせてもらえば、零を
誑かしてるのは凜花さん自身な訳で。

零はこんな凜花さん、知らないんだろうし。

零の前での凜花さんと、今の凜花さん。

まるで別人だし。

「貴方もこれ、知ってるわよね」

気付けば凜花さんは、少し前で立ち上がっていた。

その凜花さんの手元には、あの、零とお揃いのようなストラップ。

私は素直に頷いた。

「これは、南城と私の関係を証明するような物なの」

どんな関係かなんて知らないし。

婚約が決まってるって事くらい。

「私達の会社は取引をしててね。その、まぁ簡単に言えば
記念品みたいなのが、これ。だからこれがある限り、私と
南城の関係は絶えない」

どっちの会社の方が凄いんだろう、なんて、どうでも良い
事を考えた。

呼び捨てにしてる所からして、凜花さんの方かな。

「はぁ。余計な事話しちゃったわね。私が貴方に頼みた
かったのは、南城に、南城零に近付かないでって事」

じゃ、と、感情の無い、低い声で残し、中へと入って
行った凜花さん。

その場に残され、安心からか、涙が溢れた。

こんな時に、『凜花とは、結婚はしない』あの日のように、そう言ってくれたら良いのに。

零の声が聞きたい。

零と話がしたい。

やっと、やっと忘れてきた頃なのに。

こんなにも簡単に思い出す、あの、短くも楽しい日々。

「れい……」

大好きだよ

いつか、この思いが彼に届きますように。

もう一度、彼と話が出来ますように。

本音を、言い合えますように。

そんな願いも、芽生えてきていた……

<2016/09/07 17:42 秋の空>消しゴム
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