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夢が叶う その時に


冬の夕陽が、冷たい世界を仄かに暖める。

そんな夕陽に照らされ、ゆっくりとブランコを揺らしていた。

昼休みの、夏海との会話が、頭の中で繰り返される中。


『美桜はまだ零の事が大好きなの!』

その言葉に、やっぱり黙った俺。

『美桜と一緒に居たいでしょ?』

その言葉には、素直に頷けた。

『簡単な事だよ?』

『えっ…?』

どんな顔でだろうか、夏海を見れば、夏海は優しく微笑んだ。

『美桜は、零の為に別れたの』

瀬楽さんにも言われた気がする。

『だったら、零が言えば良いんだよ。好きだから、隣に
居てくれって』

何でそんな簡単な事忘れちゃうのよ、と笑う夏海。


『だから、まだまだやり直せます』

瀬楽さんの言った、あの言葉。

その通りに、現実というものは動いてくれるのだろうか。

いや、動かすんだ。

運命なんて、信じない。

あるなら、変える。

そう、自分に叩き込み、空を見上げた時。

小さな足音がした。

そちらへ視線を向ければ、美桜が居た。

目が合えば、美桜は逃げ出すように引き返した。

気付けばそれを追い、美桜を抱きしめていた。

「離して」

「もう少し……」

「零…?」

弱々しい美桜の声に、身体は言う事を決意した。

「もう少し、待ってくれませんか」

「え?」

「凜花との結婚は、必ず解消します。それまで、あと少し。待っていてくれませんか」

言い切れば、クスッ、と控えめな笑いが聞こえた。

「良いよ」

そう言った美桜は、腕の中で体の向きを変え、俺を見上げていた。

綺麗な、大きな瞳で。

「良いよ。ちょっとなら。待っててあげる」

「美桜…」

どれくらい振りに名前を呼んだだろうか。

「そんなに見開いたらデッカイ目ぇ落ちるぞ」

今朝、瀬楽さんにも言われたその言葉に、うるさい、と
返した。

「あと本当にちょっとだからね?」

どれだけ待たせれば気が済むのよ、と笑う美桜。

この笑顔を、もう二度と消さない、そう決めて、感謝の
言葉を伝えた。

そして、感謝の気持ちを込めて、美桜を抱きしめた。

いつか、凜花にしたよりも、ずっと強く、ずっと優しく。

<2016/09/11 12:29 秋の空>消しゴム
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