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夢が叶う その時に


何とも長い一日を終え、オレンジ色に染まった教室で
帰りの準備をしていた。

「零ってどの辺から来てるの?」

「この辺」

結構面白い人かも、なんて思いながら二人を眺めて笑った。

「え、歩き?」

「うん」

「私と美桜もそうなの。一緒に帰らない?」

「良いけ…」

夏海は零の返事も待たず、行くよっ、と零の肩を叩いて
教室を出てしまった。

「あの、マイペース、なのね。気にしないで?」

難しい、か。

あれを気にするな、だなんて。

私にも出来ないと思う。

「早く〜っ!」

そのご本人が教室に顔を突っ込むように出す。

「行こっか」

零は今日も、やっぱり素敵な笑顔で頷いた。

本当、暖かみを感じるというか。

私もそんな笑顔振り撒けたら良いな。


「夏海っ!」

廊下で待っててくれた夏海の背中に飛び乗るように抱き
ついた。

流石に本当に飛びつくのは出来ない。

「やっと来たか〜。遅いよ」

「ごめんごめん。あれっ、零?」

後ろを確認すれば、零はちゃんと居た。

本当に大人しい。

「はぁい、行くよ!」

零の肩に腕を回し、巻き込むように夏海の肩にも回した。

少し危険を感じながらもそのまま階段を下りた。

「美桜、さん?」

結構下りた所で、零が呼ぶ。

「さんなんて付けないでよ。何?」

「あっ、いや……」

隣の零に視線を向ければ、零から逸らした。

「言いたい事あるなら言って?友達なんだからさっ」

やたら明るい声と同時に、零の小さめな肩を叩いた。

「じゃ、少し、離れて…」

恥ずかしそうに言う零。

素直にそれに従う。

そりゃこんな騒がしい女子にいきなり絡まれたら、そうもなるよね。

それから私達は大人しく、静かに昇降口に着いた。

「よしっ、じゃあ、校門までダッシュね」

夏海、普段はそういう事絶対言わない人のに。

男の子と関わるようになって変わったのかな。

もしそうなら、分かりやす過ぎてちょっと可愛い。

そんな事を思いながら靴に履き替えてると、そこにはもう、夏海の姿は無かった。

「なつ、み?」

「もう、行っちゃったみたい」

「ハハッ」

もう本当、笑うしかない。

「おれらも、行く?」

「あぁうん。ごめんね」

「いや…」

零と、ゆっくり校門まで向かった。

「ちょっとお!遅いよ!」

元気な声と同時に振り向く夏海。

「もうそんな走れないって」

身体はもう、バッチリ睡眠体制とってるのに。

「零、ここはどっち?」

「右」

「結構近くなのかな〜」

「どうだ……」

零が言いかけた時、誰かの鞄から携帯の着信音が。

「ごめん、多分おれ」

そう言って全く出る様子を見せない零。

「出ないの?」

「後で、掛け直すから…」

そう言った零から、もうこの事は…、みたいな雰囲気が
醸し出されてる気がした。

気のせいだったとしても、もう触れない方が良いかも。

本当にそうだった時のために。

「零と本当、家近いかもね。ここまで同じ人ってあまり
居ないの」

「えっ、あぁ、そうなんだ」

さっきから何となく、零に落ち着きがない気がする。

「掛け直せば?」

「どうせ、大した事じゃ、ないから…」

目も合わせずにそう言う零に、もうこれ以上、本当に何も言えなかった。

大人しそうだし、何かもう、可哀想で。

「あっ、おれ、こっちなんだ」

「そっか。気を付けてね」

「はい」

随分と真面目な返事に少し驚いたけど、自然に手を振った。

零も暖かい笑顔を返してくれた。

そして一つ気付いた。

近道しないと、本当に夏海と同じ道を進むんだと。

「夏海、家どこだっけ?」

「そこ」

夏海の長い指がさす方に視線を向ければ、確かに夏海の家が。

と、いう事は。

私は行き過ぎたという事になるね。

私は夏海と別れ、来た道を暫く戻り、家へと向かった。


<2016/09/01 22:42 秋の空>消しゴム
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