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眠り姫
- 1回目、終幕したような感覚を。 -

「なんで、なんで可憐が……‼︎」
よろめきながらも可憐に駆け寄る。
透き通るような白い肌には、所々に痛々しい傷跡が出来ていた。
鮮やかな赤色の液体が、そんな白い肌を伝う。
可憐を轢いたあのトラックは、既に何処かへと消えていた。
俗に言う『轢き逃げ』という行為を、実際に俺は対面してしまったのか。
「…………くそっ、くそっ……‼︎」
すっかり力の抜けた可憐の華奢な身体を支えている手に力がこもる。
「なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!!」
涙は溢れんばかりに出てくるし、叫び散らした喉は千切れるように痛い。
未だ状況を理解仕切れない脳内は、金属を叩いたような、鈍く甲高い、そんな傷みで蝕まれていく。

先ほどまで、つい先ほどまで。
この美しい顔を赤らめながらに、俺に告白して。
このガラスが刺さってしまった喉で、俺の名前を呼んでいて。
大事なものというのは、壊れるのは、一瞬。
そんな哲学や親、教師の教えを、今になって苦しいほどに痛感している。
「……うわあああああああああああああああ!!!!」
馬鹿みたいだ。
とっくに可憐の体温は奪われて。
それが死を意味していることにも、等に気づいている。
なのに、なんで。
また、一緒に笑えたらなんて。
一緒に生きることが、出来たらなんて。
死んだ人間は生き返らない。そんなの一般常識だっていうことすら笑えてくるほどに、当たり前のことだ。

ーーそれでも、まだ、チャンスがあるのなら。
神様、と枯れ果てて声も出なくなった喉の奥で、俺は呟いた。
その瞬間に、プツンと、糸が切れたかのように、俺の意識は途絶えた。

<2016/09/26 15:49 錯乱咲良>消しゴム
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