「あ、悠人おはよ」
「はよーっす可憐」
靴箱でばったりと会った可憐。夢と同じだ。
正夢なんてことはないよな、と多少の不安を抱いたが、挨拶くらい毎日交わすことだ。
だが、夢の内容。あれほどまでに悲惨な状態だった可憐を思い出し、いま目の前にいる可憐を見て安堵する。
「卒業って、実感湧かなくない?」
「えっ⁉︎あ、あぁ、そうだな。あっという間っていうか」
「何その反応?なんか悠人っぽくないなぁ。あっ、卒業するからうるっと来た感じなの?」
「違ぇよ!!!!」
また、同じ台詞。
俺の返しが違ったからか、会話の内容こそ異なるが。可憐がまず発するのは、同じ台詞だ。
「……あのさ、悠人」
なんで、夢と同じ台詞を繰り返すんだ。
俺の脳内は既に、疑問点で満ち、溢れてしまいそうだ。
「式が終わって、家に帰ってからでいいんだけどさ。浜辺に来てくれない?」
夢の中では気づかなかったが、可憐は少し頬を赤く染めていた。
だが、それに対し俺は、頭が理解という名のフォルダ容量を超えていた。つまり、真っ白。
「……ごめん、俺さ、今日親戚と一緒に卒業祝いに出かけなきゃいけなくてさ……」
「ううん!大丈夫。そりゃ、親戚のことを優先してよ!じゃあ、明日の16時頃ならどう?休日だし」
即座に思いついた嘘であるが、我ながらよくできた嘘であると思えた。
「明日は特に用事はねぇから大丈夫。っしゃ、卒業式気合い入れっぞ〜!」
「卒業式に気合い入れる部分がある訳?」
馬鹿にしたような言い方だが、なんだかんだ言って笑っている可憐であった。
「……これで、大丈夫。可憐はこの場所に来ない」
ただの夢なのに、何故こんなにも自分は焦っているのだろう。
偶然が重なっただけ。そんな風に捉えれば良いだけの話だ。
大きく深呼吸をする。潮の香りが、ほのかに嗅覚を刺激する。
「あれ、悠人⁉︎来ないって言ったじゃない!なんでいるの?」
不思議そうな顔をして、可憐がこちらを見る。
浜辺側に俺はいて、可憐は現在道路を跨いだ公衆トイレの前だ。
「それはこっちの台詞だよ!なんで、なんでいるんだよ⁉︎」
「そ、そんなに感情的にならなくたっていいじゃない……これはただのシュミレーションに来ただけであって……」
「シュミレーション?なんの?」
「な、なんでもないわよ!」
何をムキになっているのだ、コイツは。
「……まぁ、親戚との用事がなくなったってことなら、私の用事を今済まさせてもらうけど……」
可憐がゆっくりと、こちらに近づく。
恥ずかしさからか、地面に視線を向けながら。
「卒業式の日に言うのって、なんだかイタい気もするけど……」
「待て。言うな……言うな……」
自分でも、やっと聞こえるほどの声。
それほどまでに、今の俺は混乱状態だった。
「好き。悠人が、好きなの」
好きという2文字の言葉を発した途端、可憐は顔を上げた。
通学路に咲いていた、満開の桜のような、柔らかな笑顔で。
美しいものは、崩れ去るのも一瞬である。
ーーーーーその瞬間、鬱陶しいほどに煩い、クラクションが鳴り響いた。
「夢じゃ、なかった……?」
どさり、と膝から崩れ落ちる。
「嘘だ。嘘だ。きっとこれも、また夢だ。夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ!!!!」
自分の髪の毛を掻き乱しながら、喉が切れそうなほどに叫ぶ。
金属を、叩いたような。
鈍い痛みとやけに甲高い音が、脳内に広がった。
意識が途絶える直前、ほんの少し触れた可憐の髪の毛が、やけに美しく感じた。
「はよーっす可憐」
靴箱でばったりと会った可憐。夢と同じだ。
正夢なんてことはないよな、と多少の不安を抱いたが、挨拶くらい毎日交わすことだ。
だが、夢の内容。あれほどまでに悲惨な状態だった可憐を思い出し、いま目の前にいる可憐を見て安堵する。
「卒業って、実感湧かなくない?」
「えっ⁉︎あ、あぁ、そうだな。あっという間っていうか」
「何その反応?なんか悠人っぽくないなぁ。あっ、卒業するからうるっと来た感じなの?」
「違ぇよ!!!!」
また、同じ台詞。
俺の返しが違ったからか、会話の内容こそ異なるが。可憐がまず発するのは、同じ台詞だ。
「……あのさ、悠人」
なんで、夢と同じ台詞を繰り返すんだ。
俺の脳内は既に、疑問点で満ち、溢れてしまいそうだ。
「式が終わって、家に帰ってからでいいんだけどさ。浜辺に来てくれない?」
夢の中では気づかなかったが、可憐は少し頬を赤く染めていた。
だが、それに対し俺は、頭が理解という名のフォルダ容量を超えていた。つまり、真っ白。
「……ごめん、俺さ、今日親戚と一緒に卒業祝いに出かけなきゃいけなくてさ……」
「ううん!大丈夫。そりゃ、親戚のことを優先してよ!じゃあ、明日の16時頃ならどう?休日だし」
即座に思いついた嘘であるが、我ながらよくできた嘘であると思えた。
「明日は特に用事はねぇから大丈夫。っしゃ、卒業式気合い入れっぞ〜!」
「卒業式に気合い入れる部分がある訳?」
馬鹿にしたような言い方だが、なんだかんだ言って笑っている可憐であった。
「……これで、大丈夫。可憐はこの場所に来ない」
ただの夢なのに、何故こんなにも自分は焦っているのだろう。
偶然が重なっただけ。そんな風に捉えれば良いだけの話だ。
大きく深呼吸をする。潮の香りが、ほのかに嗅覚を刺激する。
「あれ、悠人⁉︎来ないって言ったじゃない!なんでいるの?」
不思議そうな顔をして、可憐がこちらを見る。
浜辺側に俺はいて、可憐は現在道路を跨いだ公衆トイレの前だ。
「それはこっちの台詞だよ!なんで、なんでいるんだよ⁉︎」
「そ、そんなに感情的にならなくたっていいじゃない……これはただのシュミレーションに来ただけであって……」
「シュミレーション?なんの?」
「な、なんでもないわよ!」
何をムキになっているのだ、コイツは。
「……まぁ、親戚との用事がなくなったってことなら、私の用事を今済まさせてもらうけど……」
可憐がゆっくりと、こちらに近づく。
恥ずかしさからか、地面に視線を向けながら。
「卒業式の日に言うのって、なんだかイタい気もするけど……」
「待て。言うな……言うな……」
自分でも、やっと聞こえるほどの声。
それほどまでに、今の俺は混乱状態だった。
「好き。悠人が、好きなの」
好きという2文字の言葉を発した途端、可憐は顔を上げた。
通学路に咲いていた、満開の桜のような、柔らかな笑顔で。
美しいものは、崩れ去るのも一瞬である。
ーーーーーその瞬間、鬱陶しいほどに煩い、クラクションが鳴り響いた。
「夢じゃ、なかった……?」
どさり、と膝から崩れ落ちる。
「嘘だ。嘘だ。きっとこれも、また夢だ。夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ!!!!」
自分の髪の毛を掻き乱しながら、喉が切れそうなほどに叫ぶ。
金属を、叩いたような。
鈍い痛みとやけに甲高い音が、脳内に広がった。
意識が途絶える直前、ほんの少し触れた可憐の髪の毛が、やけに美しく感じた。
