「……じゃあ私!これから親戚の集まりがあるから!」
走り去ろうとする可憐。
何度も、見た光景のワンシーン。
鳴り響くクラクション。これも、同じ。
可憐の細く、白い手首を思い切り引っ張った。
そして、自分が前に出る。
もしも、ここで誰かが死ななければならない運命ならば。
可憐の代わりに、自分でも良いではないか。
蟻と、象。大きさはどんなに違えども、命の重さは同じ。
小学校の低学年の、道徳の時間で。
担任の先生が、そう教えてくれた。
命の重さが同じというならば、俺を殺してくれ。
どこが特に痛い、という感覚はなかった。
全身が、均一に痛みを訴えていた。
出血多量なのだろうか、意識がだんだんと朦朧としてきた。
駆け寄って来た可憐の涙が、俺の頬を濡らした。
俺がいきなり引っ張ったから、転んだのだろうか。
可憐の顔は、僅かに傷ついていたが、生きていた。
繰り返される、様子もなかった。
ありがとう、と声に出したかったが、声すらも掠れて、自分でも聞き取れなかった。
−可憐視点−
「……なんとか、一命は取り留めましたよ」
小太りした、中年の医師が、額に浮かぶ汗を拭きながら言う。
頼り甲斐のなさそうな見た目であるが、腕は確かであった。
「良かった……!ありがとうございます、本当に、ありがとうございます!」
「……しかし」
しかし、という接続詞は、次に何か否定的文面が来るものだ。
「……なにか、あるんですか?」
「記憶障害、とでも言いましょうか……」
「記憶、障害……?それって、記憶喪失、といったものと似た感じで?」
「はい。似てるというか、まさに。断片的ではありますが、記憶喪失です」
「そう、ですか……でも、一命を取り留めてくださったことは感謝しています。これから、会いに行っても良いですか?」
「それは勿論。よろしくお願いします」
私は、急ぎ足で病室へと向かった。
走り去ろうとする可憐。
何度も、見た光景のワンシーン。
鳴り響くクラクション。これも、同じ。
可憐の細く、白い手首を思い切り引っ張った。
そして、自分が前に出る。
もしも、ここで誰かが死ななければならない運命ならば。
可憐の代わりに、自分でも良いではないか。
蟻と、象。大きさはどんなに違えども、命の重さは同じ。
小学校の低学年の、道徳の時間で。
担任の先生が、そう教えてくれた。
命の重さが同じというならば、俺を殺してくれ。
どこが特に痛い、という感覚はなかった。
全身が、均一に痛みを訴えていた。
出血多量なのだろうか、意識がだんだんと朦朧としてきた。
駆け寄って来た可憐の涙が、俺の頬を濡らした。
俺がいきなり引っ張ったから、転んだのだろうか。
可憐の顔は、僅かに傷ついていたが、生きていた。
繰り返される、様子もなかった。
ありがとう、と声に出したかったが、声すらも掠れて、自分でも聞き取れなかった。
−可憐視点−
「……なんとか、一命は取り留めましたよ」
小太りした、中年の医師が、額に浮かぶ汗を拭きながら言う。
頼り甲斐のなさそうな見た目であるが、腕は確かであった。
「良かった……!ありがとうございます、本当に、ありがとうございます!」
「……しかし」
しかし、という接続詞は、次に何か否定的文面が来るものだ。
「……なにか、あるんですか?」
「記憶障害、とでも言いましょうか……」
「記憶、障害……?それって、記憶喪失、といったものと似た感じで?」
「はい。似てるというか、まさに。断片的ではありますが、記憶喪失です」
「そう、ですか……でも、一命を取り留めてくださったことは感謝しています。これから、会いに行っても良いですか?」
「それは勿論。よろしくお願いします」
私は、急ぎ足で病室へと向かった。
