男の名前は桜井 孝士郎。
情報処理科の1年で、
何がどうヤバいのかはわからないが、ヤバいやつらとつるんでヤバいバイトをしているらしい。
わかったのはそれぐらいだった。
「1年ってことは、2つ下か・・・」
(年下は興味ねぇなー。金持ってねぇし)
そもそも、身なりに無頓着過ぎて論外である。
(ツラは髪に隠れてよく見えねぇし)
このまま何の接点もないまま、いずれは忘れるものだと思っていたある日、
「これ落としましたけど」
「は❔」
突然呼び止められて振り向いた先にはあの桜井がいた。
桜井の手には自分の画材道具が握られている。
「あ、あぁ。ありがと」
驚いて反応するのが少し遅れてしまった。
「あと、落とした時にここが取れたみたいで」
「…うわ、ほんとだ」
「たぶん接着剤かなんかでくっつければ使えると思うけど…」
「いいよ、どうせ買い替えようと思ってたとこだし」
「そっすか」
(ゴツゴツしてて男らしいし、荒れてるけど、綺麗な手してんなこいつ…)
「なんすか…」
「え、…あぁ、悪い」
(やべ、ついじっと見ちまったよ。変に思われたかな。)
そう思ってチラリと表情をうかがうが、目は伸ばしっぱなしの前髪に隠れてよく見えない。
「じゃ、…」
桜井は軽く頭を下げてそのまま去っていった。
