(なんで俺はこいつ相手にこんな話ししてんだろ。)
「別にいいじゃないっすか。
変でも何でも。好きなんすから。それを表現出来る環境もあるし」
「そんなこと、はじめて言われた…」
「世の中にはもっと汚くて人に言えないようなことがたくさんあるから」
そう言った桜井の顔は髪で隠れてよく見えないが、いつもよりもどこか影があるように見えた。
「ガキが何言ってんだよ」
「ま、そうなんすけどね」
桜井は自嘲気味に薄く笑った。
ヤバいやつらとつるんでヤバいバイトをしているという桜井の噂が頭を過ぎる。
(まさかな…)
「お前は何で情報なんだよ」
「…色々資格が取りやすいから、かな」
「ふうん。なんかやりたいことでもあんの」
「まだはっきりとは。ただ、食うに困るのだけは勘弁すね」
「食うに困るって、お前…」
からかってやろうかとも思ったが、桜井の表情を覆う影が深くなった気がしてやめた。
どうやら噂もただの噂ではないのかもしれない。
