「すみません、ここって、漢和辞典置いてますか?」
「漢和辞典ですね。あのFという表示のあるフロアで、赤い本棚にございます。...ご案内致しましょうか?」
「あっ、大丈夫です、ありがとうございましたー。」
若い女性客の間延びした礼の言葉に笑顔を返し、書籍の在庫足しを続行する。
比較的広いこの書店の中、響く足音は尽きない。
その足音を聞きながら、僕は一度首を回した。
結局昨日は、あのあとすぐに家に帰った。
アルコールも入っていたし、何よりお互い気が動転していて、元々の話より早く別れたのだ。
東さんは、今朝すでにメールをくれた。
『「いってらっしゃい」って言って(^人^)!!』という謎のメールだったので、とりあえず言われた通りにした。
綺麗な人だと思う。
眉目秀麗とはいかないが、雰囲気、だろうか。
宇宙より深い黒い瞳には、恒星を思わせる輝きがあって、肌はCMのアイドルよろしくきめ細かい。小柄だと言える僕とは違う高身長。
今まで僕が抱いてきた小説家のイメージとは、遥かに異なるきらびやかな笑顔と言ったら...。
「浦安くん、本崩れるよー。」
「えっ、わ、わわ......!!」
平塚さんが本の束を持って、脇を通り抜けていく。
それと同時にいつの間にか脇に積み上げていた時代小説が、バババ、と音をたてて斜めに崩れた。
「大丈夫か?」
「すみません、ぼーっとしてて...」
笑いながら助けてくれたのは、こちらも先輩の高村諒慈(たかむら りょうじ)さん。
小説を束にして僕に渡しながら、彼は僕を笑う。
「珍しいな、ぼーっとしてるなんて。お前すごく真面目なのに。」
「や、ちょっと考え事をしてて...。気を付けます。」
「いいよ別に。誰でもあることさ。」
立ち上がりつつ、床についていた膝の埃をはらった高村さんは、在庫の積まれた棚車を通路脇によける。
細かいところまで気の配れる人だ。
ちょっと考えるしぐさを見せて、続けて冗談っぽく高村さんは言う。
「恋でもしてるのか?」
恋をしている...
「ちっ、...違いますよ!!...そんな人いません!」
落としそうになった本を持ち直しながら、僕は早口にそういった。
「漢和辞典ですね。あのFという表示のあるフロアで、赤い本棚にございます。...ご案内致しましょうか?」
「あっ、大丈夫です、ありがとうございましたー。」
若い女性客の間延びした礼の言葉に笑顔を返し、書籍の在庫足しを続行する。
比較的広いこの書店の中、響く足音は尽きない。
その足音を聞きながら、僕は一度首を回した。
結局昨日は、あのあとすぐに家に帰った。
アルコールも入っていたし、何よりお互い気が動転していて、元々の話より早く別れたのだ。
東さんは、今朝すでにメールをくれた。
『「いってらっしゃい」って言って(^人^)!!』という謎のメールだったので、とりあえず言われた通りにした。
綺麗な人だと思う。
眉目秀麗とはいかないが、雰囲気、だろうか。
宇宙より深い黒い瞳には、恒星を思わせる輝きがあって、肌はCMのアイドルよろしくきめ細かい。小柄だと言える僕とは違う高身長。
今まで僕が抱いてきた小説家のイメージとは、遥かに異なるきらびやかな笑顔と言ったら...。
「浦安くん、本崩れるよー。」
「えっ、わ、わわ......!!」
平塚さんが本の束を持って、脇を通り抜けていく。
それと同時にいつの間にか脇に積み上げていた時代小説が、バババ、と音をたてて斜めに崩れた。
「大丈夫か?」
「すみません、ぼーっとしてて...」
笑いながら助けてくれたのは、こちらも先輩の高村諒慈(たかむら りょうじ)さん。
小説を束にして僕に渡しながら、彼は僕を笑う。
「珍しいな、ぼーっとしてるなんて。お前すごく真面目なのに。」
「や、ちょっと考え事をしてて...。気を付けます。」
「いいよ別に。誰でもあることさ。」
立ち上がりつつ、床についていた膝の埃をはらった高村さんは、在庫の積まれた棚車を通路脇によける。
細かいところまで気の配れる人だ。
ちょっと考えるしぐさを見せて、続けて冗談っぽく高村さんは言う。
「恋でもしてるのか?」
恋をしている...
「ちっ、...違いますよ!!...そんな人いません!」
落としそうになった本を持ち直しながら、僕は早口にそういった。
