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想い舞う頃


「やっと帰れる!って思った時だよ?ヒドくない?」

玄関で少し話し、リビングに来た。

そして私の言葉に対する、うん、という何度目かの瞬の
反応を見て、思った。

「瞬、何かあったよね?」と。

持っていたペットボトルをテーブルに置き、瞬の顔を見る。

「何もないよ」

そう言った後、少し暗くなった瞬の表情を、私は見逃さなかった。

「ねぇ、何?ちゃんと言ってよ」

ソファに座ったまま瞬の方を向き、瞬の目を見てさらに聞く。

もう、嫌だから。

瞬の痛みに、気付けないのは。

もう……そんなの嫌だよ。

「いや、まだ……」

「どーもー。あれ、愛ちゃんじゃん」

まだ?と聞き返した私の声をかき消すように、奏の声が
聞こえた。

「え、奏?」

私に笑顔を返し、当たり前のようにキッチンへ行く奏。

そして彼は、買い物にでも行っていたのか袋の中を漁る。

「えっ、待って?奏、どうやって入ってきたの?」

ソファから立ち、ダイニングテーブルの近くに行き、奏に
聞く。

それに、秘密〜、と笑う奏。

何この2人、鍵渡してんの?

どれだけ信頼し合ってるのよ。

「愛ちゃんいつ来たの?」

「えっ?さっき、だけど…」

「遅くならないうちに帰りなね?」

いや、奏はどうなのよ。

もう何か、友達を通り越して家族みたいな存在なのかな?

うん、そうなんだろうね。

必死に自分を納得させようとしていると、ガスを点ける音が。

「な、何してんの」

「夕飯作り」

そう答える奏の顔には、笑みが浮かんでいた。

当たり前のように当たり前とは思えない事を答えないで?

2人は友達なんだよね?

それ以上に何か、家政婦にでもなっちゃった?奏。

「えっと、奏は毎日来てるの?」

「これくらいしか僕に出来る事はないからね。あっ」

ちょっと、と小さく手招きされ、奏の元へ。

「何?」

「今度、3人で話したい事があるんだけど…」

「…3人?」

コソッと言われたその言葉に聞き返す。

それに笑顔で頷く奏に、普通に不安しか抱かなかった。

<2016/11/07 20:36 秋の空>消しゴム
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