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想い舞う頃


「……え、何で?」

やっといつもの顔に戻った奏が、瞬に言う。

瞬の前にしゃがんで、彼の顔を見上げるようにして。

そんな奏と目を合わせ、小さく笑う瞬。

「何でって。え、やだよ?話せなくなってまで2人と居るの」

「いやいや、待って?」

自分を落ち着かせるように深めの呼吸を数回繰り返す奏。

「あのね?着けたとしても、話す……」

そう言いかけたところで奏は、少し表情を曇らせた。

「…言葉を交わす方法はあるでしょ?」

ああそうか、瞬は自分の声で話したいんだ。

機械を通した声なら、『話す』とは言わないのだろう。

少なくとも、瞬、彼の中では。

「分かってるよ。分かってる……」

だけど……、と呟き、悲し気な視線を奏の居ない左下へ落とす瞬。

沈黙が流れる。

今までの私達では、ありえないほどに重苦しい沈黙が。

「…良いじゃんっ」

そんな空気が嫌で、流れ始めた沈黙を払った。

2人の視線が私へ向く。

「瞬だって、直感で決めた訳じゃないでしょ?」

ちゃんと瞬なりに考えて、悩んで出した答えでしょ?

そんな私の問い掛けに、瞬は小さくも確かに頷いた。

「そうだよね」

気付けば、そんなふうに頷いていた。

笑顔で。

「良いんだよ。瞬がちゃんと考えて出した答えなら」

たとえそれが、瞬との時間を短くするような、そんな答え
だったとしても。

瞬の前、奏の隣にしゃがみ、瞬の顔を見上げる。

笑って欲しくて、精一杯笑った。

そうしたら、瞬も少し悲しそうではあるけど、笑ってくれた。

笑ってくれて良かった、なんて安心した時。

……左側から視線を感じた。

ちらりとそちらを見れば、真剣な奏の瞳があった。

その瞳の言いたい事なら、もう分かるよ。

後で2人で話したい、とかその辺だろう。

またCherry?

また、Cherry Blossomで暗ったい話するの?

…ああ、そうなんだね。

奏の瞳が、正解、って言ってる気するもん。

<2016/11/12 00:55 秋の空>消しゴム
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