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想い舞う頃


メールで伝えた15分後に何とか間に合い、奏と向かい合うように席に着いた。

仕事はお父さんに任せたから休みなんだとか。

……そこまでして話したい事って、何?

「ん? 話って?」

今度は何かと要らぬ緊張感に包まれながら、自分の前に置かれたコーヒーカップを眺める奏に聞く。

「……僕もう一回、ちゃんと話がしたい」

「ん、瞬と?」

奏は小さく頷き、続けた。

「それで、その時は愛ちゃんにも来て欲しい」

「うん。……うん、はっ?」

何で?

何でそこで私が出てくるの?

「だって……」

だって。

「愛ちゃんは良いの?」

今まで私を包んでいた緊張感が、何か他のマイナスなものに変わった。

悲しみ、不安……、なんだろう、これ。

「……何が?」

そんな複雑な気持ちで聞き返すけど。

分かってる。

そんなの、聞かなくたって。

愛ちゃんは瞬くんに本当の想いを伝えなくて良いの?

きっと、そんなところだろう。

「ねぇっ、これじゃ、これじゃ瞬くんだって……」

奏の中でストップが掛かったのか、彼はそこで言葉を止め、一度私から目を逸らした。

そしてもう一度私の目を見て、

「愛ちゃんの思ってる事を教えて? 本当にこれで良いと思ってるのか、そうじゃないかだけでも」

そう続けた。

……動いた。

自分の中で何かが動いたのを感じた。

「私だって……」

外の口も、無意識のうちに動いてる。

「ん?」

そんな私に、優しく続けるよう促す奏。

それが、私を動かした何かをさらに大きくした。

だから……

「私だって嫌だよっ!」

ここを喫茶店である事を忘れ、結構な声で叫んでしまった。

「私だって……瞬と居たいよ。だけど……」

瞬に、これ以上辛い思いなんてさせたくない……

そう思い、強く唇を噛み涙を堪える。

そんな私に、優しく暖かな微笑みを向ける奏。

やっと言ってくれたね、って。

涙で滲む視界に奏の微笑みが入る。

「そう言えば良いんだよ。その勢いで」

そう言った奏の声は、とても優しいものだった。

だけど、今の私にはそれが逆効果だった。

「そんな……そんな簡単に言わないでよ……」

消えそうな、微かな震えた声でそう言い残し、席を立ち
喫茶店を出た。

<2016/11/23 15:12 秋の空>消しゴム
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