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想い舞う頃


「奏。愛と何かあったのか?」

俺が聞くと、奏はピクリと肩を震わせ、俺から目を逸らすように俯いた。

「何が……」
「僕……」

何があったんだ?

そう聞こうとしたら言葉が被り、奏の言葉の続きを待つ。

「僕、分かってなかった」

「……何を?」

「愛ちゃんの事。少しの間 一緒に居たから、結構分かってるかも、…なんて。自惚れてた……」

「奏……」

ぼんやりとフローリングを眺める奏の真似をするように、俺も下を向いた。

自惚れてた

もしお前がそうなら、俺はどうなる。

自分以上に愛を想ってるヤツは居ないと、何の根拠もなく
思い込み、何度も進む方向を間違えた。

そのくせ間違えた後は、愛が居なくても平気、愛のためだ、そう言い聞かせて必死に耐えてた自分もいる。

俺なんかより、奏の方がよっぽど愛を分かってる。

「俺は、愛の何も……」

何も分かってない、そう言おうとしたら、なら、と奏の
優しい声が聞こえた。

顔を上げれば、奏の微笑みが。

中学の頃は、俺が奏の側に居る感じだったのに。

高校に上がってからは、奏が側に居るのが当たり前になり。

今となっては、奏が俺の側に居てくれてる。

高校を卒業し病気が分かってからは、ずっとコイツの笑顔に救われてたな……

なんて、改めて友達の大切さを感じた時。

「なら、分かってあげれば良いんだよ。今日、愛ちゃん
呼ぶからさ。瞬くんの想い、ちゃんと伝えてよ?」

今喧嘩中なんだから、と笑う奏。

それに、マジか、と返したが、そんな簡単に終わらせて良い話ではないような気がしてきた。

「えっ、愛と喧嘩したのか?」

奏の顔を見上げれば、彼はニコッと子供のように笑った。

「うっそ~っ! 喧嘩なんかする訳なーいじゃーん」

そう言ってどこか自慢気に笑う奏だが、コイツの素直さが言ってる。

何かありました、って。

「奏、何かあったんだろ? 愛と」

「何もないって。あっ、そろそろ向かわないと」

じゃっ、とリビングを出、愛を迎えに行った奏。


愛と奏が喧嘩……

俺か……?

俺の選んだ道は、また……

また、間違ってたのだろうか……

そんな不安が頭を過ぎる中、奏が居なくなり静かになった
リビングで、右手に乗った指輪を眺めた。

<2016/11/26 00:30 秋の空>消しゴム
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