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想い舞う頃


暫くして愛が帰り、奏と2人自分の部屋に。

さっきの出来事が、一刻も早く彼の記憶から消える事を願う。

「ちゃんと考えてたんだね」

「……えっ?」

驚きを隠せぬまま、ベッドから右側に居る奏を見れば、彼は悲しみを含んだ笑みを浮かべていた。

「指輪外すって言い出した時、本当 何考えてんのかと思ったけど」

そう、何故か半笑いで言う奏。

そして真面目な顔に戻ると、彼は再び口を開いた。

「もう1回聞くけど、良いんだよね?」と。

優しい声とは違い、真剣な奏の目。

愛に病気の事を話すと決める勇気をくれた時の、あの目と同じだ。

その目を見ても、変わらない想い。

それで、俺は決めたんだと気づく。

「……あぁ。良いんだよ」

奏の目を真っ直ぐと見て、そう返す。

彼の笑みに含まれる悲しみが大きくなったと同時に、目が
優しくなった。

「そっか。後悔しないのはもちろん、もう愛ちゃんの事、悲しませないでね?」

「あぁ。あったりめーだろ」

「もしまた、愛ちゃんを悲しませるような事したら。僕、
本気で許さないから」

「あぁ」

俺に、後どれだけの時間が残されてるかは分からない。

けど俺は、その残された時間が短くても、長くても。

最期まで愛を想い、愛しぬくと決めた。

最初着けないと決めた時は、ただ怖かったからだけど。

家族や2人の手を借りる事が増えていくのが、病気と向き合うのが。

だけど今は、周りの手を借りながらも、最期まで自分の力で走り抜こうと思ったんだ。

呼吸だけは、最期まで自分の力でしようと。

こうして、あの決断への想いを変えてくれたのも、愛だった。

愛が、こんな俺と真っ直ぐに向き合ってくれたから。

そんな愛のようになりたいと、思ったから。

「んー。何か、新たな日々が始まる、って感じだね」

「あー、……ハハッ、だな?」

新たな日々、か。

そんな事を思いながら窓の外を見れば、本格的な秋のような高い空が、夕焼け色に染まっていた。


あの決断への想いが変わっただけで、何だかすごく……

未来が明るいものに変わったような、そんな気がする。

後悔しないと、決めたからかな。


愛の一番星になると、決めたからかな。

<2016/12/01 00:09 秋の空>消しゴム
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