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想い舞う頃


7年程前。

中学1年の春。

誰と帰る訳でもなく、1人で帰り道を進んでいた。


だーる……

心の中で何度言ったか分からない帰り道。

ふと、どこを見ていた訳でもないが、左側を見れば小さな
公園のブランコに、1人の男が座っているのを見つけた。

まあ、学ランという所からそう思っただけだが。

この公園に居るくらいじゃ、この辺のヤツだよな……


「どうした。大丈夫かよ」

気づけば彼の前に立ち、そう問い掛けていた。

名札を見れば、大野 奏の3文字が。

「あぁ。お前か、大野 奏って」

軽く頭を下げるように頷く奏。

大野 奏という男子生徒が学校で何かと目立っているのは
知っていた。

家が果物屋をやってる、って事もすぐ噂になってたし。

「で? 何してんの。こんなとこで」

っていうより、そんな汚れて。

この時の奏は、何でそんなに、ってほど汚れてた。

制服は砂か何かで真っ白だし。

「あっ、僕が……」

「ん?」

コイツが大野 奏だと知ったら、さすがに優しく接する。

イジメられてんのも知ってたし、何かしてやりたいとも
思ってたし。

そんなヤツとやっと話せた訳だからな。

「出、さなかった、から……」

「何を?」

「あっ、いや、何でも……」
「ないようには見えねぇけど」

言葉を遮れば、奏はそれ以上話さなくなった。

きっと、この時の俺の言い方がキツかったから。

優しく言ってたつもりだが、きっと。

「失礼?」

ため息混じりに断りを入れ、奏の制服の袖をまくった。

「……お前、……」

制服の下に現れた奏の腕を見て、それしか言葉が出なかった。

女並みに細く白いその腕は、痛々しい傷や青い痣でいっぱいだった。

「どうしたんだよ、これ……」

誰かにやられた、というのは分かったが、その『誰か』が
分かるかも知れない、と思い聞いてみたが、答えはなかった。

とりあえず行こうぜ、と言おうとしたら、転んだ、と微かな声が返ってきた。

「転んだ? ちょ、どんだけ派手に転んだんだよ」

「……僕、ドジだから……」

まあ。

「見えなくはねぇけどな」

少し笑って言ってみたが、ぼんやりとどこかを眺める奏からは何も返って来なかった。

「とりあえず立てっか?」

奏は うん、と小さく答えると、ゆっくりと立ち上がった。

女かよ

立ち上がった奏を見た素直な感想はそれだった。

<2016/12/03 18:51 秋の空>消しゴム
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