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想い舞う頃


ボロボロな奏と公園を出、ゆっくりと自分の家に帰って来た。

奏をリビングで待たせ、救急箱と一緒にリビングへ戻り
簡単な手当てを始める。

と、

「いっ、つぁ……」

消毒が滲みるのか、顔をしかめぎゅっと目を瞑る奏。

「すぐだから」

俺の中での、優しさ最上級!っていう言い方で言い、手当てを進める。

何でどうやられたらこうなるんだか……

見てるだけで痛い、なんて思いながら。

「誰だ?」

「……えっ?」

「誰にやられたんだよ」

まぁだいたい想像はできたが、その問いに答えはなかった。

「……言いたくねぇなら良いけど」

「……ごめん」

怒ってねぇし、と言いながら、最後 小さい傷に絆創膏を
貼った。

「よしっ、これで平気だろ」

「ありがとう……」

「全然。気にすんな」

俺こそ、これしか出来なくてごめんな

……なんて言葉は、心で呟き実際には言わなかった。

今以上に素直じゃなかったから。


ーーそれから、奏による『ありがとう』の嵐が巻き起こり、それが落ち着いた頃に彼を見送るため玄関へ。

「本当、ありがとう」

玄関を出る前、振り返り再びそう言う奏。

「気にすんなって」

ありがとう、なんて言われ慣れてないからか、少し嬉しかったけど、やっぱりそれは隠して返した。

そんな俺に奏は、もう一度 ありがとう、と呟き、その少し後、表情を曇らせた。

「あ、あの……」

「何だ? トイレならあっちだ……」

少しふざけてみようとしたら、じゃなくて、と真面目に
遮られた。

「わりぃ」

さすがに素直に謝れば、奏は俯き、何かを決心したように
言った。

「友達になってくれない?」と。

話すのが得意じゃなかったのか分かんないけど、やたら
途切れ途切れに。

そんな奏の緊張を解くような意味も込めて、俺はこう返した。

「ばーか。友達でもねぇヤツ家に上げねぇよ」と。

そうしたら奏、すげぇキラキラした笑顔で言った。

「本当!?」って。

そんなに喜ばれると何か、逆に恥ずかしい。

「あぁ」

「葉山、くん……」

「ハハッ、瞬で良いよ」

「……瞬っ、……くん」

「ま、何でも良いよ。俺はお前を奏って呼ぶけどな」

何故か俺は、今思えば少し自慢気にそう言った。

「じゃあ、瞬くん」

「何?」

「バイバイ」

「おぉ、バイバイ……?」

バイバイ、なんて言い慣れてなくて、少しぎこちなく返す。

そんな俺に、最高の笑顔で手を振り、家を出て行った奏。


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