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想い舞う頃


あれから何度も、ありがとうと言えるチャンスはあった。

母の手を借りて食事もしたし、トイレも行った。

その後俺の口から、ありがとう という言葉は出なかった。

言おうとはしたけど、全てタイミングを逃した。

それを何度か繰り返し、気づけば窓の外に見えるのは夕方の空。

下の方がオレンジ色に染まった、濃い青色の空。

自分の部屋の窓から見えるそんな空で、探す。

一番星を。

今の、目標となる星を。

まだ、あの星のようになりたいと思える星は見つかっていない。

それを見つけるのが今の目標で、それを達成したら理想の星に向かって、歩いていく。

それまでにきっと、たくさんの新しい目標を見つける。

それらをひとつひとつ達成して、俺はやっとなれる。

一番星に。

毎晩、空で一番輝けるような、そんな星に。


あの時の話、覚えてて良かった。

あの話を忘れていれば、今きっと。

こんなふうに目標なんて持っていないだろうから。

目標を見つけること、なんて難しい目標を立て、それを
達成出来ずに居たかも知れない。

本当、愛には感謝しきれない。

何となく、ふぅ、と息を吐いた時。


ーーピーンポーン……

夕方の1人で居た部屋に、チャイムの音が聞こえてきた。

俺は当たり前のように車椅子を動かし、部屋を出る。

<2016/12/14 00:12 秋の空>消しゴム
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