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想い舞う頃


あれから数日。

奏が来たこの日も、俺は探していた。

広めのウッドデッキに出て、理想の、目標の星を。

外に出たのはどれくらい振りだろうか。

最近はずっと家の中に居るから、最後に出たのなんて覚えていない。

外に出た直後、あまりの寒さに体が震えた。

本当にもう、冬は近いんだな。

冬を目前にした、秋の淡い水色をした空を見上げる。

「あっ……」

思わず声が出た。


見つけた


空を見上げた素直な感想はそれだった。

開いた大きな窓から家の中へ入り、奏の姿を探すため辺りを見渡す。

「あ、カナ」

「何です? シューくん」

何か頼む時は必ずそう呼ぶんだから、と笑う奏に、まぁな、と返す。

「あの、写真撮ってくれないか?」

「写真? 瞬くんの?」

「ばーか俺を撮ってどうする。空を撮ってほしい」

「空ぁ?」

何でまた、と聞いてくる奏を、まあまあ、と簡単に流し、インスタントカメラを持たせて外へ出る。


「うっ、寒ッ!」

「あのー、……あそこ」

後ろで体を震わせる奏には特に触れず、見つけた理想の星を示すように見つめる。

「どこ?」

左隣で屈み、空を見上げる奏に目線で伝える。

「ん? ……あっ可愛い」

「だろ?」

「瞬くん空なんて好きなんだ」

「まあ、嫌いじゃあねぇな」

ふーん、と適当な返事を返し、そこそこ真面目に写真を撮ってくれる奏。

俺の目線から。

「これで良いの?」

出来た写真を差し出す奏の手からそれを受け取り、簡単に確認する。

ダメっていうのも分かんないけど。

「全然良い。ありがとな」

「ううん」

……今、言えたな。

ありがとうって、すごい自然に。

「……どうした?」

「あぁいや。何でも」

「写真って良いよね。一瞬の風景をずっと残せる」

僕もカメラ買おうかな、と言いながら部屋へ戻っていく奏の言葉で、思った。

「残せる、……か」

車椅子のレバーを軽く握る右手を見る。

そして、その手を少し動かしてみる。

「まだ……いけるな」

「どうした? 寒いから早く入りな?」

「あの奏、もうひとつ良いか?」

「えっ?」

<2016/12/15 00:38 秋の空>消しゴム
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