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想い舞う頃


もう慣れてきた、この片付いた瞬の部屋。

慣れたと言っても、やっぱり憧れのような何かがある。

この人は何をさせても完璧なんだね。

そんな人の部屋で、いただきます、とテーブルに置かれた
コーヒーの缶を持てば、その人は笑った。

「な、何さ」

「別に?」

何か変だったかな。

少し考えてみるけど、結局答えには辿り着かない。

だから諦めて、コーヒーを一口いただく。

そのコーヒーは、私が苦手な事を知っているかのように、優しい味だった。

「美味しっ」

素直な感想を一言で言えば、遂に吹かれた。

「だから何よ。さっきっから」

「いや、わりぃ。そっくりだなー、と」

「そっくり?」

「誰かさんにな」

笑って言う、その『誰かさん』を知りたいんだよね。

けど、それを知っている瞬はそれ以上教えてくれなかった。

本当いじわる。

そんな瞬の前で、携帯の天気予報を見ていて思った。

「もう、冬なんだね」と。

無意識のうちに、声に出して。

「あー、だな」

無意識だったから、返事が来て少し驚いたけど、それを隠す。

「冬になったら、3人でイルミネーションでも見に行かない?」

「良いじゃん」

この驚きは流石に隠せなかった。

視線は携帯の画面から、小さめのテーブルを挟んで前に
座る瞬へ。

「え?」

「いや、素直じゃん」

「うるさい」

「ふふっ」

瞬、学校と全然違うよね。

学校じゃ話さないし、表情も滅多に変わらないし。

話し掛ければ普通に話してくれるけど、放つオーラが今や
帰りと全然違う。

けどこうして、学校とは違う姿を見せてくれるって、少し
嬉しい。


<2016/09/29 17:50 秋の空>消しゴム
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