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想い舞う頃


「瞬…!」

「おぉ、やっぱり」

桜を散らす春の風に負けないくらいの、爽やかな笑顔で
私に軽く手を振る瞬。

そしてその人は、私の隣に。

やっぱり、瞬が隣に居ると安心する。

「ここって凄いよね」

桜を見上げ、その向こうにある太陽に目を細めながら言った。

瞬も同じようにして、ここ?と聞き返す。

「うん。だって、今もまだ咲いてるって、私達に見せて
くれてるみたいじゃん?そして、今こうして……会えた事」

足元に広がる、桜を引き立てるような芝生に視線を落とす。

「なら…」

瞬の声が少し小さくなり、左隣に居る瞬を見る。

その瞬も、足元に広がる芝生に見つめていた。

「もしここに…俺らにとって……大きな何かがあるんなら。
何かあった時は、ここに来ねぇ?」

そう言って私に視線を移す瞬の顔には、あの優しい微笑みが浮かんでいた。

それに、笑って頷けば良いものを、バカな私は
「何かあった時?」と聞き返した。

バカ、って言われるか、あの話を無かったものにするか、
そのどちらかだと思ってたけど、瞬は話してくれた。

「1人が辛い時、なかなか会えない時、嬉しい事があった時……どんな時でも良い。お互いを求めたら、ここに来る。
そうしたら、今日みたいに会える」 と。

青空に舞う桜を見上げ、太陽の眩しさに目を細め。

そして、優しい笑みを浮かべて。

私もそれを真似するように、花びらの舞う真っ青な空と、
薄紅色の小さな花を、視界いっぱいに広げた。

同じような顔に、なってるかな。

「来ようよ。会いたくなったら……ここに。こうして…会えるように」

「やっぱり愛はバカだな」

その言葉に、異常な程に反応を示す体。

ぶん、と音が聞こえそうな勢いで隣の瞬に首を向ける。

険しい顔してるんだろうなぁ、とか思いながら。

けどこういう時の私にとって、そんな事はどうでも良い。

「怖えよ…ってか、本当の事言っただけだし」

「しんっじ……」
「あんな話を真剣に聞くなんてさ」

そう言うと瞬は、いつものようにニコっと笑った。

それが堪らなく可愛い。

「よし。今年の約束は…『互いを求めたらここに来る』な」

「毎年約束するね。まだ2回目だけど」

来年はどんな約束をするのかな。

「あんま難しい事だと忘れちまうからな。うまーく決めないと」

「何それ、私が忘れるって事?」

バイクの方へ向かって歩いて行く瞬の背中に問い掛ける。

本当、慣れてるけど とことん失礼な人。

ってか、返事ないし。

返事くらいしてよ……

<2016/10/17 13:26 秋の空>消しゴム
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