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想い舞う頃


久々に明るい気分で家に帰って来た。

時計を確認すれば、針は6時過ぎをさしていた。

「ふぅ」

部屋のドアを開け、中へ入れば目に入る、瞬がくれた、
白いうさぎのぬいぐるみ。

「ただいまっ」

長く可愛らしい耳を、ちょんっ、と突くように触った。

その子が持つ小さな木箱には、まだ何も入っていない。

もし入れるなら、何を入れるのだろう。

ふと、携帯を握る右手を見た。

中指で輝く、シンプルな指輪。

大きさ的にはちょうど良さそうだな、なんて思ってしまった。

「…ははっ……」

こんな大切な物、入れる訳がない。

「んっ、どぅあ!」

ガタリとその場に崩れ落ち、そのままテーブルに突っ伏す。

右手に握る携帯に付けられたストラップが、ジャラリと音を立ててテーブルに落ちる。

「んっふふ」

明日は久々に、瞬の家に行くことになった。

今から楽しみで仕方がない。

そんな気持ちを落ち着かせるような意味で、近くにあった
水を少し多めに飲んだ。

「ぷはっ。……あっ」

今、当たり前のようにペットボトルの蓋を開けた左手を見る。

そしてふと思い出す、高3の時の奏の誕生日と、その前日。

前日にはソファを落とし、当日には右手でペットボトルを
持ち、左手を眺めていた瞬。

「その……頃から…?」

ずっと一緒に居たのに。

「はぁ…」

悔やんでも仕方ない、明日と今を楽しもう。

そう自分に言い聞かせ、有り難みを感じながらゆっくりと
蓋を閉めた。


<2016/10/28 17:05 秋の空>消しゴム
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