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想い舞う頃


愛と奏も帰り、静かになってしまった我が家。

2人とはあの後、夕飯を食べて解散となった。

あの時はまだ、外はそこまで暗くなかった。

けど、今はもう真っ暗。

何時になったのだろう。

寝つけず、ベッドの上で見えもしない天井を探していた。

そして闇の中に伸ばす、左手。

何か掴むものがあったわけじゃない。

ただ何となく、確認したかったんだ。

この左手がまだ動くことを、伸ばせることを。

が、闇に伸ばした左手は、その闇を怖がるように、すぐに
ベッドへ帰ってきた。

この左手に違和感を覚えたのは、いつだっただろうか。

奏にその事を言ったのは、高校卒業 直前だった。

そして卒業後、奏に説得されて行った病院。

そこで告げられたのは、何だっただろうか。

まともに覚えていないが、今は治療法が見つかっていない、という事だけは覚えている。

そして、発症後2年から5年で……という事も。

それらを聞いて浮かんだのが、愛の前から消える事だった。

愛の前から、愛の記憶から。

けど、奏はそれも許さなかった。

愛にこの事を伝える覚悟をくれた時の奏の目は、本気だった。

まだ少しでも愛ちゃんの事を考えてるなら伝えた方が良い、と言った、奏の目は。

あの真っ直ぐな目に見つめられたら、頷くしかなかった。

けど今考えたら、やっぱり伝えない方が良かったのでは、
とも思う。

愛に迷惑を掛けながら生きていくくらいなら、愛に他の人の元へ行って欲しかったし。

俺は、病気の事を知ってすぐの頃も、今も。

愛を巻き込む事への覚悟が出来ずにいた。

俺の選ぶべき道は、どっちなのだろうか。


残りの時間を大好きな人と一緒に過ごすか、

その人の……幸せを望むか……

<2016/10/29 18:56 秋の空>消しゴム
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