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想い舞う頃


仕事が終わり、お店の前で待ち合わせをした奏と帰り道を
進み、今は部屋に。

あれだけ勉強したんだ、瞬とは上手く接していける、そう
言い聞かせて奏の話が始まるのを待つこと数分。

「瞬くん……もしかしたら…」

だいたい想像の出来た『今』だった。

「そっか」

瞬とのこれからに、それほど自身があるのだろうか。

そう言った私の声は、意外と明るい声だった。

それに、少し安心したように微笑む奏。

「やっぱり愛ちゃんはすごいね」

「えっ?」

「ちゃんと、瞬くんとの未来を描いてる」

瞬との未来……

私が これからを生きていきたいと思えるのは、瞬だけだ。

「だからこんなに雑誌とか本、あるんだよね」

「そうだよっ。意味の分からない本、いっぱい読んだ。
これで、瞬とも上手くやっていけると思ってる」

「そうだね」

ふふっ、と笑う私に、小さな子どもに向けるような微笑みを浮かべる奏。

少し恥ずかしくなって、つい目を逸らした。

そんな時、部屋に響く携帯の着信音。

ごめんね、という奏の声の後、その音は鳴り止んだ。

「はい?……えっ、それ姉ちゃんも…」

分かったよ…、と小さく答え、盛大にため息を吐いて電話を切る奏。

「ハハッ、呼び出し」

「最近、そんなに忙しいの?」

「あっ、知ってるんだ。瞬くん?」

「あぁうん。何かごめん」

「いやいや、全然」

まあ、瞬から聞いてなかったら今も私は奏をホストだと
思ってただろうね。

何であの時はそう思ったんだろう。

「じゃあ、また」

そう言って携帯をズボンのポケットに入れ、ドアの方へ
行く奏。

「あっ、今度一緒に会いに行こうよ」

「瞬に?奏、最近行ってないの?」

「あのほら…」

行っても呼び出されるしさ、と言うと、奏の表情が少し
暗くなった。

「大丈夫だよっ」

あの日は、たまたま何か、あったんじゃん?ねぇ。

まあ、それに気付けなかったのは、私達だけど。

「ほらっ、お姉さん待たせてるんでしょ?」

「あっ、そうだ。じゃあね」

「はいよ〜」

見送ろうとしたら断られたため、奏とはここでお別れ。

さてと。

お勉強でもしますか。

内容入って来んのかな……

机に置かれた雑誌とノートを眺めながら、そんな心配を
抱いた。

<2016/10/30 17:37 秋の空>消しゴム
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