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想い舞う頃


明らかにおかしい私に気付き、励ましてくれた奏。

彼のお陰で、私は今、瞬の家の玄関前まで来た。

あとはチャイムを鳴らすだけ、というところまで。

逢いたいのに……

話したい事だっていっぱいあるし、こういう日を何度も
頭の中で繰り広げた。

それなのに、何でだろう。

手が動かない。

会う覚悟が出来ない。

そんな自分を落ち着かせようと、深く呼吸をする。

「もう押して良い?」

私の答えも待たず、さっさとチャイムを鳴らしてしまう奏。

「わっ、ちょっと…!」

んふふ、と不気味な笑い方をする奏。

もう変な事しないでよ……

人の家の玄関前まで来てチャイムを鳴らさない私が言える
ような事じゃないけどさ。

緊張から、真夏にもかかわらず少し冷える手を握った時。

「…はい」

ガチャ、という音の後中から聞こえた声に、ピクリと体が
反応する。

瞬だ…

瞬の声…

私の大好きな人が、逢いたかった人が。

今、この扉の向こうに居るんだ……

あれ、でもそうなら、この扉は開いても良いはずなのに…

変な事で頭がいっぱいになる私の隣で、失礼〜、とその扉を開ける奏。

静かに開いた扉の向こうに現れたのは、確かに瞬だった。

私と同じような顔をした、私を見上げるようにする、
…瞬だった。

「あ、愛……」

「久しぶり。瞬」

私が笑顔でそう言っても、彼の顔に浮かぶはずだった笑みは浮かばなかった。

それどころか、どんどん『無』になっていく彼の表情。

「…何で来たんだよ」

そして発されたのは、低く感情の無い、彼の声。

「……えっ?」

それに、戸惑いと焦りを隠せない私。

どうしよう、こんな雰囲気になっちゃって……

「お前に会いたいと言った記憶はない。帰れ」

グサグサと刺さる、瞬の感情の無い声で並べられる、
恐ろしい言葉。

「えっ、ねぇ瞬くん……」
「良いから帰れっ!」

奏の言葉を遮り、遂に叫ぶように出された、『帰れ』の
一言。

その時の声は、やたら感情がこもっていた。

怖くて怖くて、私はその場から逃げた。

いや違う、その場からだけでなく、瞬からも逃げた。

絶対、逃げたくなんてなかったのに。

初めて、瞬とは居られないと思った。

だから、ただ走った。

来た道を、少しでも速く……


逢いたかった人から、逃げるために。

少しでも、遠ざかるために……


何か、軽く急展開…!?
(秋の空 大丈夫かな…)
<2016/10/31 00:00 秋の空>消しゴム
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