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想い舞う頃


「はぁ〜……」

私の盛大なため息が漏れるのは、真昼の公園。

瞬から逃げて辿り着いたのは、何故かここだった。

流れる水を眺めながら、ベンチに座って涙を拭う。

さっきは……私はどうするべきだったのだろうか。

流れる水を眺めて自分に問い掛けても、答えなんて出ない。

「居たっ!愛ちゃん…」

声の聞こえた方を見れば、左側から小走りで、私の座る
ベンチに寄ってくる奏が。

「奏……ごめんね…」

「僕は良いんだけど、愛ちゃんは良かったの?」

公園に着いてすぐ下ろした髪で、涙を隠しながら頷く。

嘘つき、と言って私の右隣に座る奏。

バレてる。

奏はすごいね。

何で分かっちゃうんだろう。

「どっちが良い?」

「え?」

隣の奏を見れば、眩しいものを見るみたいに目を細めて
流れる水を眺めていた。

その横顔が、何となく悲しそうだった。

「自分の気持ちに素直になって傷つくか、それすらしないで人の事だけ考えて傷つくか」

私は前者だ。

きっと。

それなら

「人の事考えて、って方が良いよ…」

自分の気持ちに素直になって傷つくのは、どうにもならない。

人の事だけ考えて傷ついたなら、そうなる事は想像出来た
はずだもん。

「じゃあ愛ちゃんは……」

これで良いんだ?とやっぱりどこか悲しそうに聞く奏。

その言葉の意味は、よく分からなかった。

それを悟ったのか奏は、

「愛ちゃんも瞬くんも。今日の2人はそうやって自分で
傷ついた。人の事だけ考えて、自分の気持ちは後回し」

そう、さっきの言葉の意味を説明するように言った。

「そんな事ない。私はただ、あそこに居たくなかったから
逃げたの」

そう……

瞬と居るのが、初めて無理だと思ったから。

「それで後悔しないと思ってる?」

少し低くなった奏の声に、またピクリと体が跳ねた。

奏から目を逸らすように俯く。

「ごめん。別に怒ってないよ」

いや、絶対軽く腹立ってるよね。

そんな事を思いながら俯く、私の前に立つ奏。

彼が怖い顔をしていることを承知で、ゆっくりと顔を上げる。

けど私の視界に現れた彼は、少し笑っていた。

「もし少しでも後悔してるなら、もう一回会いに行った方が良いよ」

そう言う奏の視線は、太ももの上で左手を包むようにする
私の右手に向いていた気がした。

「じゃ、僕は」

その言葉と可愛らしい笑みを残して、どこかへ行って
しまった奏。

公園のベンチに残された私が、奏の後ろ姿から視線を移した先は、右手の中指にある、瞬とお揃いの指輪だった。

<2016/10/31 13:26 秋の空>消しゴム
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