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想い舞う頃


車椅子を操り、玄関のドアの前へ。

ため息を吐き、向こうに聞こえるくらいの声で返事をする。

「瞬くん?奏だけど…」

愛が居ない事を願いながら鍵を開ける。

そっとドアが開き、奏1人が立っていた。

奏1人であったことに感謝しながら、何?と聞く。

まあまあ、ともったいぶられ、仕方なくリビングへ。



「で?そろそろ良いんじゃねぇの?」

机の近くで袋の中を漁っている奏に言う。

はぁ、とため息に似た息を吐く奏。

「簡単に聞くけど……」

こんで良いの?と聞かれた。

いつもより、少し低い声で。

その声の言った言葉の意味なんて、すぐに分かった。

愛とこのままで良いのか、という意味。

「良いと思ってなかったらこうしてねぇよ」

奏の目を見ながら言うことは出来ず、車椅子をまわす。

嫌いになったの?と背後から聞こえる奏の声。

「そうなんじゃん?」

そんな事を言いながら、視界にはネックレスのチェーンに
通されたお揃いの指輪がある。

そしてその視界に、奏のジーンズが入ってきた。

顔を上げれば、奏の真剣な顔。

俺の目を見る彼の目が真っ直ぐすぎて、再び視線を下の方へ落とす。

「…嫌いなの?」

「じゃなきゃあんな態度とんねぇだろ」

嫌いになったと自分に言い聞かせるためにも、そう答えた。

「ならさ」

さらに低くなった奏の声が言う。

再び視界に現れる、真面目な表情の奏。

「外せんの?それ」

やっと俺の目から外された奏の視線の先は、俺の胸元へ。

その中でも、そこで輝く愛とお揃いの指輪。

「外せないでしょ?別に良いんだよ。外せなくたって、
外さなくたって。けど……」

返す言葉も見つからず、奏の言葉を待つ。

「自分の気持ちには素直で居てよ…」

いつもよりずっと優しい奏の声が、家のリビングに響く。

そして……俺の心にも。

<2016/11/02 16:15 秋の空>消しゴム
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