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想い舞う頃


人の家だけど、自分の家より安心する家。

それが、瞬の家。

リビングに来た時から、沈黙が流れている。

それも、決して重くなんてない。

変な意味じゃなく、私達は一緒に居たって話す事なんて
ないんだ。

だけど、一緒に居られないとすごく寂しい。

一緒に居るのが当たり前、みたいな感じになっちゃってるのかな。

「…愛」

冷房の音に負けてしまいそうな、小さな瞬の声が沈黙を
破る。

「なーに?」

「…ごめんな。前、奏と来てくれた時…」

「あ〜。あれは……」

本当驚いたよ、そう言おうと思ったけど、出来なくなった。

悔しそうな表情を浮かべ、俯く瞬を見てしまったから。

「あれは。もう良いよ」

続ける言葉を変え、瞬に笑いかけた。

何でだろう、瞬が……こんなにも弱そうに見えるのは。

自然と体が動き、瞬と目線を合わせるようにしゃがむ。

そして、瞬の顔を見上げるようにして言った。

「これからは、ずっと一緒に居ようね?」って。

細い脚の上にある、骨ばった瞬の手を包んで。

私にも、感じさせられるかな。

瞬と居る時に私が感じた、安心も感じさせてくれるような、温もりを。

「愛は、……今の俺で良いのか?」

「良いよ。瞬は瞬だもんっ」

それは、誰にも、何にも変えられないもん。

「じゃあ瞬は、私で良いの?」

「良いよ。……愛が良い」

最後に呟くように言われた言葉を、私は聞き逃さなかった。

「瞬かわいーっ!」

そう叫びながら抱きつこうとすれば、ぶっ飛ばすぞ、と 言われた。

そんな事しないくせに〜?と顔を覗き込めば、やってやる、と睨まれた。

怖い怖い。

「じゃあ、反射神経?鍛えとくよ。うん」

「無理だな。愛鈍そうだもん」

「るっさいわね!」

不思議だね。

たった今まで、私も瞬もしんみりしてたのに。

気付けばこうして笑ってる。

やっぱり、どちらかが笑顔になるには、どちらかの笑顔が
必要なんだ。

私達2人、ここから、今から。

もう一度、やり直すんだ。

2人で居られる時間と、1日1日の幸せを、忘れずに。

<2016/11/04 19:56 秋の空>消しゴム
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