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極彩月学園 声優音楽部
- 第二話 四月二日 -

「んじゃ、声優音楽部…第二回。
始めるぞー…」
昨日とは変わって凄く気だるい雰囲気で
夕日は告げた。
「紅月部長…?お疲れですね…」
「んー…?弟の事考えててなぁ…
寝れねぇんだ。心配すんな、澪…」
「目の下の隈が凄いですよ。」
「…は?いや、翼?全然大丈夫だし。」
「…これは一週間程…寝てませんね。」
「み、澪?んなわけ…な、ないだろ?」
「「さっさと保健室で寝てこいっ!!
紅月部長が寝不足じゃダメですっ!!」」
「お、おう…」
翼と澪は夕日を怒鳴りつけると
夕日の返事と共に我に戻った。
すいません。言おうと思ったが
喉元まで出かかった言葉は…
出さずに戻した。
「…じゃ、寝てくる。」
「夕日っ!!…私も行く。心配だから。」
「では…俺と澪さんで台本とか…
曲決めたりして演奏とかしてますね。」
「おう。頑張れよ。」
「しっかり寝てくださいね。日向ちゃん、
見張っててね。」
「澪、任せといて!」
明るい笑顔を澪に送ると
夕日と日向は部室を後にした。
{翼目線}
「部長は…本当に弟思いですね…」
「私も、そう思います…」
「「はぁ…」」
久しぶりに溜め息が重なった。
少し昔では、よく溜め息だけが…
重なる事が多かった。
それは俺が…この性格になる前の話。
小学一年から六年までの…六年間。
俺が義理の兄と仲が良かった頃。
皆が言うに、目付きが常に鋭くて…
怖かった時だ。
彼女、澪には…既に見知った仲で、
紅月部長の弟である夕李が生きていた頃。
性格が悪いが敬語ではあったな。
自分でも分かる。
彼女との出会いは確か…図書室。
俺が小学二年の時…つまり彼女が
小学一年だった。
図書室で俺がよく座る席。
一番後ろの窓際。椅子は丁度二つあって…
教室によくある机が二つ程の面積の
テーブル。そこでよく俺は本を読んでいた。
小等部、中等部、高等部の入学式を
終えて全学年が下校の時間になった。
いつもと同じように図書室へ足を運ぶと…
小等部の入学式で一際目立っていた
青紫の綺麗な着物の少女がいた。
しかも、俺が…いつも座っている
席の隣に国語辞典片手に小等部高学年でも
読まない哲学的文学小説を読んでいた。
その着物少女の前の席には…
同じく小等部入学式で目立っていた
淡い桜色の和風ロリータ服を纏った少女。
「ねぇ、澪ちゃん?難しい本読んでるね。」
「そうかな…?辞書を見れば簡単に
読めるけど…」
「でも、澪ちゃん…辞書見なくてもさ、
殆んど分かるじゃん。」
「ま、まぁ…そうかもしれないけどね。
日向ちゃんは絵と声の天才かもね。」
「そうー?じゃあ、澪ちゃんは文学の
天才!」
「そこまでじゃないよ。」
柔らかな笑みを浮かべた着物少女は
澪だった。言い忘れていたが、
この頃に日向とも出会ったのだ。
「…あ、あの、隣…良いか?」
つい、声を掛けた。
「あ、あぁ…はい。では、私達は
席を移動しますね。お邪魔でしょうし…」
「い、いや。此処にいて大丈夫ですよ。」
言葉を口にした後、直ぐに脳裏に浮かんだ。
何いってんだ、俺。
「あ、はい…ありがとうございます。」
澪は、ふわりと微笑んだ。
女子を可愛いと思えたのは…
これが最初で最後かもしれない。
そう感じた。
「…あ、あぁ…別に。」
「…こいつ、澪とは似合わないね!」
「ひ、日向ちゃん…!?
何言ってるの、失礼でしょ…?」
「例えるなら、狼と赤ずきんならぬ…
狼と青ずきん。」
「っ、青ずきんって何だよっ…ははっ。」
つい、本心が口に出て表情に出た。
まずい。表情が青ざめていくのが
自分でも分かった。
「あ、笑った!」日向は驚いた。
「ごめんな…っ、はははっ!」
「笑うなぁ!」今思えば日向に悪いが…
笑いが込み上げた。
こんなに笑ったのは初めてかもしれない。
これが彼女、澪さんとの出会い。
殆んど毎日、放課後に図書室に来ると
二人並んで本を読んでいた。
だが、会話だけは無かった。
重なる声すら無ければ…
何も重ならないと思ったが……
溜め息だけが虚しく重なった。
これじゃ、まるで…
エンドを迎えないように出会う事を避けている
狼と赤ずきんに過ぎない。
彼女を例えるならば…やはり青ずきん
なのかもしれないが…。
似た関係なのだろうな。
「「…はぁ……」」
重なった。
こんな日の繰り返しで…
もう、同じ小等部でいられる最後の
一年がやってきた。
俺は六年、彼女は五年…
今年こそ、変えたい。
…だが……一年間、少ししか…
会話は無かった。
小等部の卒業式が始まった。
無意識に探す彼女の姿。
…あ、良かった…居た。
って、何探してるんだ…俺。
もはや、自分に…つっこみを入れるなんて
重症なのだろうか…
なんて思っていたら卒業式が終わり…
気づいたら走っていた。
彼女を探して。
…図書室。
ガラッとドアを開けると、
いつもと同じように…
俺がいつも座っている席の隣で
本を読んでいた。
「あ、あの…澪さん。」
「…あっ、蒼斗月さん。
どうしたのですか?」
「っ…伝えたい事があって…」
「あぁ、私もありますよ?」
…一瞬思考が停止した。
「っえ…?」
「ご卒業、おめでとうございます。」
礼をすると、あの日出会った時の…
ふわりとした微笑みを見せた。
「あっ、俺も…伝えたい事があるのですが…」
「?はい。」
…よし。後戻りは出来ない…
深呼吸をし、覚悟を決めた。
「俺…澪さんの事、好きです。」
今までにした事のない。自分でも
思う程の柔らかな微笑みを浮かべて
告げた。
「私も…好きです。」
彼女も同じく返してくれた。
「ご友人として。」
微笑みを見せた彼女だが…
ザシュッと心に刺さった気がした。
あ、後戻り…出来て良かった…なぁ…
そう思うしかなかったな、あの時…
というか、溜め息の話は何処にいったんだ自分。
…って、かなり時間経っているのではないか!?
気がつくと、綺麗な筝の音色が聞こえた。
…俺が好きな曲、[カコノミライとキカイの歌]だ。
「目覚めたら、そう。僕はキカイに囲まれていて…
チクタクが全ての世界にさ、迷い込んだ
みたいだねと他人事のように
呟いた…♪」
優しげな柔らかな声で歌っていた。
「…覗いたのは、とても小さな二つの
目玉。チクタクと軽い音をたてて。とても
小さな手のひらを僕にそっと伸ばしたんだ。」
彼女の筝の音色に合わせて、続けて
歌ってみた。
「…少し、落ち込んだ表情をして
いましたので…元気が出るかな…と。」
「ありがとうございます。…相変わらずに
優しいですね?」
「いえいえ、当たり前の事をしただけですよ?」
彼女が微笑むと、時計に目を向けた。
「「もう五時近いですね…」」
「…澪さん、迎えに行きます?」
「…そうですね…」
そうして部室を後にした。
{日向目線}
「日向ー…もうちょい寝るからさ…
翼と澪に帰って良いよって伝えてなー…」
「はいはい。…もう五時か…
じゃあ、伝えてくるね。…って、
もう寝てるんかい。」
そっとドアを閉めて部室に向かう。
「あっ、日向ちゃん。」
「澪!翼!先に帰って良いよー。
夕日、まだ寝るからさ!」
手を大きく振って話せば
「あぁ、分かりました。」
「紅月さんにお大事に…と
伝えといてね、日向ちゃん。」
「うん、分かった!」
じゃあ、私も部室に戻ろっと♪
戻ったら準備を終えた後みたいだね…
「じゃ、第二回…声優音楽部。
解散。」
副部長だし、お約束でね♪
これ言いたかったー…!
「「あ、ありがとうございました…」」
二人は苦笑いしてたけどね。
まぁ、そんなこんなで…
第二回が無事終了したとさ。

<2016/09/19 16:53 流夜月 澪>消しゴム
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