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合わせ鏡の吐いた嘘


もう一人の私が突然鏡に現れてから、私は鏡に向かい合うようにして座り込むようになっていた。
それは、特に理由があっての行動じゃない。

ただ、私と同じ姿をした全く別の人生を歩む彼女を、観察したいという好奇心もあった。

『今日はなんか面白いことあった?。』
「何もなかったよ。いつも通り。」
『ふーん。つまんないのねー。葉月の人生って。』
「うるさいなぁ…………。」

私たちは、毎日こんな言葉を交わし続ける。
彼女は話し上手で、私たちの会話が途切れることはなかった。

彼女はずっと鏡の向こうに座っている。

彼女にも部屋があるらしいが、どうやら私から見える範囲にしか世界が広がっていないようだった。

『あー、つまんない。結局、喧嘩したって子たちとも仲直りできてないのね。しかも部活サボったんでしょ?ボッチって貴方みたいな人をいうんだろうなー。』
「友達はいるよ。……………少ないけど。」
『へぇー。あたしと代わってくれたら友達も増えるのにー。』
「…………嫌だよ。葉月の世界はもっとつまらなそうだし。」

私のそんな言葉に彼女は少しだけ目を見開き、そして笑った。

『確かにつまらない。だって私の世界には、貴方の見える範囲のものしかないんだもの。だから羨ましい。貴方の世界にはいろんなものがあるもの。』

彼女はそう言って私の方に手を伸ばした。
整った爪先が鏡に触れる。
この薄いガラス一枚が、私たちの世界を分けている。
彼女の話では、私が心の底から呼び出さない限り、彼女はこのガラスを通り抜けられないらしい。

『だからこそ、勿体無い。心底理解できない。それだけいろんなものがある世界で、貴方は自分を生かしきれてないからね!。ああ、むかつく!見てるだけで嫌になる!。』
「そんなの、しょうがないじゃん……。」

鏡の向こうで頭を抱える彼女に、私は少しだけ笑ってしまった。
本当に、一緒なのに何もかもが違う。

彼女なら確かに、私よりもうまくやっていけるかもしれないのに。



<2016/09/27 22:17 なうか>消しゴム
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