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合わせ鏡の吐いた嘘


「おかえり〜。」

自室の扉を開けると、“葉月”はベッドに寝転んで雑誌を読んでいた。
私はその能天気な様子にため息をつく。

…………お気楽でいいよね、まったく。

私は鞄を置き、早々と制服から部屋着に着替えた。
“葉月”が鏡に現れるまでは、制服のままゴロゴロしてしまう日が多かったけど、今は帰ってすぐ部屋着に着替える習慣がついている。
それもこれも、彼女がうるさく言うからだ。
自分の身なりとは関係がないというのに。

着替え終わってベッドを振り返ると、“葉月”が不機嫌そうにこっちを見ていることに気がついた。

「………何。」

少し目を細めてそう問うと、“葉月”は口をゆっくりと開く。

「…やっぱり、ダサい。」
「は?。」
「服!!部屋着のこと言ってるのよ芋女!。」

言いながら私を人差し指で指した“葉月”は、ベッドからキビキビと降りて鏡の中に入っていった。
鏡の表面がぐにょん、と歪む。
未だにこの鏡の謎は解けない。
どうやら、この鏡への出入りは彼女しかできないようだ。

私は自分の冴えないジャージ姿を見ながら、片手で頭をかいた。
……ダサい、と言われても…。

確かに、“葉月”の部屋着はとても可愛かった。
前髪はすっきりとあげていて、部屋の中だと言ってもリップやハンドクリームを欠かさず塗っている。
そういうのを凄いなと思うあたり、私にはやはり女子力がないのだ。

自分の服装を見ながらぼうっとしていると、再び鏡がぐにょんとゆがんだ。
視線を鏡に向けると、“葉月”がバッと1着の服を差し出してくる。

「これ、今すぐ着て!。髪もダメ!肌のお手入れもダメ!全部一から!。」

そう言って不機嫌そうに腕を組む“葉月”。
私はぽかん、と服を受け取り、そして吹き出してしまった。


彼女といると、今日あった嫌なことも何故か忘れてしまうのだ。


<2016/10/20 01:26 なうか>消しゴム
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