もしまた君に出逢えたなら
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自分の中に、かすかに、けれど確かにある記憶。
幼い頃、誰かと一緒に遊んだり、ご飯を食べていたり、お話をしたり。
(君は、一体誰…?)
「ボクのお願い、何でも一つだけ聞いてくれるって言ったよね?」
顔は思い出せない少年は、うん、と頷いた。
「じゃあ〜…ボクを、ずっと好きでいて?」
「約束するよ!君をずっと好きでいるし、ずっと側にいるよ!」
「ずっと好きでいてくれればいーの!」
(自分の中に確かにあるのに、思い出せない、この記憶は一体…?)
七つの大罪らと王女エリザベスは、リオネス王国の二人の聖騎士長の野望を打砕き、聖騎士長、ヘンドリクセンを倒し、リオネス王国に再び平和が戻った。
そして今日は、王国誕生祭の日。
街にはたくさんのお店がひらかれ、今日ばかりは昼間からもあちこちの酒場が繁盛していた。再び訪れた平和に人々は祝杯をあげるのであった。
そして王国を救った英雄、七つの大罪らは豚の帽子亭にいた。
彼らも豚の帽子亭を夕方から交代で営業することにして、昼間はそれぞれが自由にすごすことになった。
「あ、あのっ!メリオダス様!」
「ん?なんだ?エリザベス」
エリザベスが呼び止めると、メリオダスは振り返って優しく微笑んだ。
「その…もしよろしければ、私と一緒にお祭りに行きませんか?」
「ああ、もちろんいいぜ!ただし、夜はしっかり働いてもらうからな!にっしっし」
その返答にエリザベスはぱあぁっと顔を明るくして
「はいっ!頑張ります!」と言った。
二人は仲良さそうに出かけて行った。
一方バンは、もうすでにゴウセルを巻き込んですでに街のあちこちで酒を呑み歩いていた。
本当はキングも巻き込まれる予定だったが、今日は先約がある、と言って頑なに断り、ゴウセルに悪いとおもいながらも二人を店から無理矢理追い出したのだ。
そしてそんなキングはその先約というやつに、先程から何度も頭を悩ませていた。
(オイラ、なんか変じゃないよね?あぁ、これからディアンヌと二人でお祭り…。緊張してきた…)
「キーング!準備できたー?」
「うわぁ!ディ、ディアンヌ⁉︎」
突然後ろから声をかけられ、驚いたキングは振り返った。
するとそこには、淡いオレンジ色のワンピースを身につけ、ゆるく巻いてあるツインテールに白のレースのリボンをつけ、クリーム色の大きなリボンのついたバッグを片手に持ち、いつもよりおめかしをしたディアンヌがいた。
「か…わいい」
するとディアンヌは顔を赤くしてツインテールで顔を隠す仕草をした。
(はっ!オイラってば声に出てた⁉︎)
「えっへへ〜そうかな?ありがとう、キング。さっ、僕達も出発しよ!」
「う、うん!そうだね!」
二人も出かけて行った。
街に出てみるとたくさんのお店が並んでいた。
巨人族であるディアンヌは、普段ならこんな行事にも参加したことはないのだろう。
小さくなっている今は見るもの全てが珍しいようで、とてもはしゃいでいた。
そんなディアンヌを見ているだけでキングはとても嬉しくなった。
楽しい時間はあっという間にすぎ、辺りは少し暗くなり始めていた。
「ねっ、キング!今日は花火があがるんだって!ボク、いい場所知ってるんだ!一緒に見ない?」
「もちろんだよ!いい場所って?」
「着いて来て!」
ディアンヌの後を着いていきながら、キングは考え事をしていた。
(はぁ〜、ディアンヌってば、オイラのことどう思ってるんだろう?なんでオイラを誘ってくれたのかなぁ。それに今日はずいぶん可愛い格好してるし。まさかオイラのために…ってそんなわけないだろ!オイラのバカ!ディアンヌは団長のことが…)
「着いたよー!」
ふいに呼ばれて顔をあげると、そこは他に誰もいなく、街より少し高いところにあるため街を一望できる場所だった。
「わぁ、こんなところがあるなんて知らなかったなぁ」
「ふふっ、でしょ?この辺に座ろう!」
二人は腰掛けると、ディアンヌは街を眺め喋り出した。
「あっ、あのレンガの家は鍛冶屋さんだ!あそこは雑貨屋さん、で、あの辺は酒場がいっぱいあるところだ!今日はあの辺はにぎやかだね!あっ、あんなところに教会があるよ!」
ディアンヌが指差す方を見ると、綺麗な教会があり、十字架の紋章が小さく見えた。
「…ねぇキング、知ってる?教会は、ある儀式を行う場所なんだって。それはね、人間は結婚っていう約束事を交わし、一緒に命を繋いでいくんだって。」
キングははっ、と顔をあげてディアンヌを見た。
(ディアンヌ…その話は、昔、オイラが君に…)
「寿命が長いボク達には意味がないことかもしれないけど…羨ましいよね?」
少し間をおいてキングは問いかけた。
「ねぇ、ディアンヌ。どうして今日、オイラを、誘ってくれたの…?」
するとディアンヌは少し困ったように笑いながら
「今日は、君に確かめてみたいことがあるんだ」と言った。
「確かめてみたいこと?」
「うん。…君は、あの時の約束、覚えているのかなぁってこと」
さああっと心地よい夜風が通り抜けた。
「…あの時の、約束?…そんな、まさか。だって、君、覚えて…?」
キングは自分の心臓のどくんどくん、と鼓動の音がはっきり聞こえてくるぐらい緊張していた。
「君、ひょっとして…昔の記憶が戻ったんじゃ…?」
「ボクが先に質問したの!君は、あのときの約束、覚えているの?キング。…ううん、ハーレクイン」
その名前を聞いた瞬間、キングの疑問は確信に変わった。
こぶしをぎゅっと握りしめ、覚悟を決めてディアンヌの顔を見つめこう言った。
「…当たり前じゃないか。一日だって、忘れたことなんかないよ。そしてオイラは、今だってその約束通り…ずっと君が好きだ。」
やっと言えた、という思いと、言ってしまったという後悔が混ざった複雑な気持ちになった。
「たとえ、今君が好きなのが団長だとしても、オイラはそれを邪魔するつもりもないし、やめろとも言わない。
ただ、オイラの気持ちは、知っててもらいたかった。急にこんなこと言ってごめんね。」
キングは情けなそうに笑った。
するとディアンヌは、突然涙をぽろぽろとこぼし始めた。
「ディアンヌ⁉︎ご、ごめん!オイラが、余計なこと言ったから!」
急に泣き出したディアンヌをみて、うろたえるキング。
するとディアンヌは涙をぬぐいながら首をぶんぶんと横にふった。
「違うの…、どうして、キングが、そんなこと言うの?好きな人に、ボクが他の人を好きだなんて、勘違いされることが悲しいの!」
一瞬、ディアンヌの言葉の意味が理解できなかったキングはしばらく考えて
「えっ⁉︎ディアンヌ…それって…どういう意味…」
するとディアンヌは顔を真っ赤にして泣きながらこう言った。
「だから!ボクが好きなのは団長じゃない!…ハーレクイン、君が好きなの!」
ぴゅー…ドオオオン!!!
大きな音がして、夜空に光の華が咲いた。
(ディアンヌが…オイラを、好き…?ああ、オイラは今夢でもみてるのだろうか)
「ディアンヌ」
呼ばれて顔をあげると、体をぐいっと引き寄せられた。
数秒たってから、キングに抱きしめられていると理解したディアンヌは、顔に急激に熱が集まってくるのを感じた。
「キ、キング…?」
「好きだ」
「…っ!!///ぼ、ボクだって、好きだもん」
「夢みたいだ…。やっと、届いた」
そう言うとキングはそっとディアンヌを離し、ディアンヌの頬に手をそえた。
そしてそっとディアンヌにキスをした。
「…顔、真っ赤だよ?」
「キングこそ、真っ赤だもん」
二人はふふっと笑いあって、花火を見上げた。
そしてフィナーレの花火があがった。
「そろそろ戻ろうか?団長とエリザベスと交代しないとだもんね」
「そうだね。いこうか」
「本当は、もっと一緒にいたいけど、なーんて♪」
「これからは、ずっと一緒にいるよ」
照れくさそうにキングは笑った。
二人は仲良く手を繋いでお店に足を運んだ。
豚の帽子亭の扉をあけると、もうたくさんのお客さんが入って賑わっていた。
「おーい、キング、ディアンヌ、遅いぞー!」
「団長ごめん!すぐ変わるね!」
「なーに仲良く手繋いでんだー?♪さては二人、なんかあったのかー?♪」
バンは料理をしながら二人をひやかした。
二人は真っ赤になって
「うるさいよっ!」と言って仕事をし始めた。
「エリザベス〜!遅くなっちゃってごめんね!後は変わるから、団長と休んできてね!」
ディアンヌは申し訳なさそうにエリザベスにいうと
「気にしないで!それより…後で教えてね…♪」
とウィンクしながら言うとディアンヌは顔を赤らめてうん、と頷いた。
豚の帽子亭の営業が終わることには、みんなはとても疲れていたので、休むことにした。
特に今日はたくさん料理をしてくれたバンはいつにもなく疲れたようで、エリザベスがバンにお酒を運んできた。
「バン様、今日は本当にありがとうございます。後片付けはやっておきますので、バン様はもうお休みになって下さい。」
「おお〜♪わりぃーな、王女さん♪助かるぜ♪」
バンはお酒の瓶を開けながら言った。
「エリザベス、ボクも手伝うっ!」
「ディアンヌ!ありがとう!…ねぇ、今日のこと、もう聞いてもいいかしら?」
ディアンヌは照れながらも、今日のことを話してくれた。
「まぁ!よかったわね!ディアンヌ。キング様は、ずっとディアンヌのことばかりだったものね!なんだか、私まで嬉しいわ」
ふふっと笑いながらエリザベスがいうと、ディアンヌはありがとうと嬉しそうに笑った。
キングはメリオダスと一緒に外で空になった酒の樽を整理していた。
「キング、お前、ディアンヌにちゃんと気持ち伝えたみたいだな!」
「う、うん。その、色々とありがとうね」
「よかったな。にししっ」
「お〜い、俺には礼なしかよ?♪」
酒を片手にバンがあらわれた。
「まぁ…一応、ありがとう」
「一応ってなんだよ♪」
「ふむ、キングの記憶からすると、キングとディアンヌは両思いになったのか?実に興味深いな。」
「ちょっとゴウセル!勝手に記憶よまないでよ!」
「こちらも後片付けは終わったぞ。何か手伝うことはあるか?」
マーリンが店の中から出てきた。
「んーにゃ、後片付けも終わったことだし、みんなでのみますかー!」メリオダスが言うとみんな賛成して、お店の中に入っていった。
みんながお店に入ってから、バンは一人星空を見上げてつぶやいた。
「なぁ〜、お前の兄貴は、ずいぶんと幸せそうだぜ〜♪…俺も、いつか必ず、お前を奪うからな、エレイン♪」
「バンー!何してんのー?」
そして豚の帽子亭の長い夜はふけていった。
(オイラは、あのとき自分に約束したんだ。
またもし君に出逢えたなら、この気持ちを君に伝えるって…。
やっと、約束を果たせたよ。)
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