妖精王の森にたどり着いたキングとディアンヌ。
始めてみるその美しい景色に、ディアンヌは見惚れていた。
しかし、キングはすぐにある異変に気づいた。
「…妙だな。静かすぎる。それに、いつもならこの辺りにだって見張りの妖精がいるはずなのに…。」
妖精王の森は、他族の進入をかんたんには許していなかった。自分がいた時でも、念には念をと、必ず森の入り口には見張りを置いていた。
ましてや妖精王のいない今なら、尚更必要なはずなのに、辺りにはキングとディアンヌの他、誰の姿も見当たらず、静寂の中、ただ川の水が流れる音と、風で木々がゆれる音しか聞こえなかった。
と、その時。
森の奥の方からものすごい地響きと共に、得体の知れないうめき声が聞こえてきた。
「ウオオオおおおおぉ!!!!」
「…!!ハーレクイン!今の、何⁉︎」
「わからない。でも…このとてつもない魔力は…!」
七つの大罪として、数々の敵を倒してきた彼らは、その魔力を身体で感じ取ると、どうやらただ者ではないらしいということは即座にわかった。
「ディアンヌ!危険だ。君はここにいて!オイラが一人で行く!」
「えっ…でも!」
(ズキッ)
ハーレクインに駆け寄ろうとしたディアンヌだったが、突然鋭い頭痛に襲われた。
(それが終わったら、オイラは…。)
(お友達を探して、みんなの所に帰ってあげて。)
(君の元に必ず戻る。約束するよ。必ず…。)
(…うん!)
(え…?何?今の)
しかし今はそれが何なのか、考えている余裕はなかった。
「ハーレクイン!ボクも、一緒に…!」
「君は、まだ小さいままじゃないか!お願いだ。君を危険な目に合わせたくない。ここにいてくれ!」
確かに、ハーレクインの言う通り、小さいままの自分では、自分の神器を使うことすらできない。
「…わかった。ハーレクイン、絶対戻ってきてよ!」
「必ず戻るよ!」
そう言うと、ハーレクインはシャスティフォルからディアンヌの服と神器を下ろし、見たこともないスピードで森の奥へと消えていった。
ハーレクインを見送ると
「…もう、ボクを一人にしないでよ。」
(…あれ?ボク、今、なんて?)
ディアンヌは時折混ざる記憶に、理解が出来なかった。
森の奥へと飛んで行ったキングは、森の奥へと進むほど、魔力が近づいているのを感じた。
(近いぞ!)
ついに、その正体にたどり着いたキング。
そしてその圧倒的な大きさ、魔力に驚愕した。
「魔人…族⁉︎」
目の前の怪物は、自分よりも何倍も大きかった。
周りを見渡すと、仲間が何人か倒れていた。
その内の一人に駆け寄り、声をかけた。
「しっかりしろ!アイツは、どこから入った⁉︎」
「…!!まさか、ハーレクイン…様。最期に、お会いできるとは…。どうか…あなたを見放した我々を…お許しください。仲間を…お救いください…。」
「そんな…見放しただなんて、見放したのは、オイラの方だ!本当に…すまない。でも、オイラは、今出来ることをするだけだ!これ以上、仲間を傷つけさせるものか…!!」
「ハーレクイン…様」
キングは宙に飛び立つと、シャスティフォルを槍に変え、背後に回り込んだ。
「あれは…。」
魔人をよく見ると、厳重にガードされている箇所が何箇所かあることに気づいた。
恐らく、あれが心臓だ。しかし、全てをつぶさない限り、魔人は倒せない。
「霊槍シャスティフォル第五形態、増殖(インクリース)!」
シャスティフォルはたちまち小さな無数の槍へ姿を変え、魔人の背後の心臓へと突き刺さる。
「命中!」
魔人は背後からの攻撃に気づき、振り返った。
魔人の攻撃をかわすキング。
「よくも…何度も妖精王の森に…。仲間を傷つけてくれたね。死んで罪を償ってもらうよ。」
再びシャスティフォルは魔人へと向かい放たれた。
遠くから聞こえるものすごい魔力と音に、なす術もないディアンヌは、ハーレクインの無事を祈るしかなかった。
(ん…?)
ディアンヌは、自分の身体に違和感を覚えた。
すると、徐々に身体が元の大きさに戻っているではないか。
「わわわっ!ふ、服!」
慌てて掴んだ服で身体を隠しながら、やがてディアンヌは元の巨人の姿へと戻った。
「…ハーレクイン!待っててね!」
服を急いできて、神器ギデオンを手に持つと、ディアンヌは森の奥へと向かうのであった。
