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妖精王の罪 第11話



とても幸せな夢を見ていた。
妖精王の森で、エレインやヘルブラム、他の妖精達、そしてディアンヌが仲良くお喋りしている。
そんな光景を眺めていると、みんなが自分に向かって手招きをしている。
「ハーレクイン!」
「キング!」
「兄さん」
「ハーレクイン様!」

そう。その光景は彼がかつて望んだもの。
そして、絶対に、もう叶うことのない光景。


「ごめんね、みんな。オイラは、そこにはいけないよ。行く資格がないよ。ごめんね…。」



「はっ!」
キングは目覚めた。
目をあけると、そこには見慣れた天井が広がっていた。
豚の帽子亭の、木でできた天井。

頭の整理がしばらくできずにいると、目元から何かが流れ落ちてきた。
夢を見ながら泣くなんて、初めてだったキングは、自分で驚いた。
目元をごしごしこすって涙を拭き取った。

「よう、キング。目が覚めたんだな。大丈夫か?」
声のする方を見ると、団長がドアの前に立っていた。
そして、大事なことを思い出し、キングは声を荒げた。

「ディアンヌは⁉︎妖精王の森は⁉︎魔人はどうなったの!」
慌ててベッドから飛び起きたキングは、身体に鈍い痛みが走り、いたっ!と声を出して身体をおさえる。

「落ち着け。ディアンヌは無事だ。お前が庇ったんだろ?傷はまだあるけど、普通に元気だ。
お前が魔人を倒したって、妖精達が言ってたらしいぞ。だから森も無事。オスローの力で、ディアンヌがお前と一緒にボロボロで戻ってきたときは、何事かと思ったよ。」
「そっか…よかった。
魔人を倒して、気を失っちゃったから、どうしたかと思って。」
「にしてもお前、魔人相手によく一人で立ち向かうよな〜。オスローで、俺たちも呼んでくれれば良かったのに。」
「あの時は必死で…ディアンヌを守らなきゃって思って、そんなこと思いつきもしなかったよ。」
「まぁ結果オーライだったな。でもお前、丸二日くらい目を覚まさなかったんだぞ?」
「えっ、そうなの?」
自分がそんなに眠り込んでいたと知って驚いたキング。
「ディアンヌなんか、自分もケガしてるのに、キングの側にいるー!って聞かなくて大変だったんだぞ?
マーリンが無理矢理ディアンヌを連れてったけど。
ディアンヌに早く会ってやれよ?にししっ」
いつものようにいたずらっぽく笑う団長。
ディアンヌがそんなことを言っていたと聞いて赤面するキング。
「ディアンヌはどこ?」
「今はマーリンの薬で小さくなってる。部屋で眠っているはずだ。」
「団長、ありがとう。オイラ、ディアンヌのところに行ってくるよ。」
「おお。じゃーな!」
そう言うと団長は一階へと降りていった。

キングはゆっくりとベッドから降りると、二階へと続く階段をふよふよと浮いて上がっていった。
ケガしていても、こういうとき妖精は便利だな、とか改めて思いながら、ディアンヌの部屋へと向かう。
ディアンヌの部屋の扉の前に着くと、二回ノックをした。
中から「どうぞ。」と聞こえたのでドアを開けた。

すると、ディアンヌはベッドで眠っていて、側の椅子にはエリザベス様が座っていた。
「キング様!目を覚まされたのですね!良かった…。ディアンヌも、今は眠ってますけどだいぶ回復したみたいですよ。」
エリザベスは微笑みながらそう伝えてくれた。
「心配かけてすみません。もしかして、ずっとディアンヌについててくれたんですか?ありがとう、エリザベス様。」
ディアンヌの側には、彼女の看病に使われたであろうタオルや洗面器や、着替えなどが置いてあった。
「私にできるとこは、このくらいですから。
では、私は少しメリオダス様のところへ行ってきます。」
彼女はドアをあけ、一階へ降りていった。
気を利かせてくれたのだろう。

キングはさっきエリザベスが座っていた椅子に腰掛け、ディアンヌの寝顔を見つめた。
彼女の髪を優しく撫でながら語りかけた。
「ごめんよディアンヌ。また君にケガをさせてしまったね。オイラ、肝心な時にダメな奴だよね。」

「そんなことないよ?」
眠っていたはずの彼女の声が聞こえて、驚いて彼女を見ると、ぱちっと目を開けていたずらっぽく笑った。

「起きてたの⁉︎」
「今ので起きた」
キングは顔を赤らめる。
ディアンヌは会話を続けた。
「君は、ダメなんかじゃないよ。命がけでボクを守ってくれたじゃない。…あの時みたいに。」
「え?」
「王都での時も、ボクを助けてくれたじゃない?」
えへへ、と笑うディアンヌ。

「ディアンヌ…君、もしかして思い出したの…?」

ディアンヌは上半身だけ起こし、キングを見つめて、少し黙った。
その間に、ディアンヌの真剣な表情に緊張して、心臓の鼓動がばくばくと聞こえてきた。

「全部、思い出したよ。ハーレクイン」
にっこり笑って、布団で顔を半分隠すディアンヌ。
「本当…に?」
「うん。ボクが七つの大罪だってことも、ずっと昔から、君と出会ってたことも、全部全部、思い出したの。」

二百年前の記憶も戻ったと聞いて、キングはさらに鼓動が高まるのを感じた。

「ねぇ、キング。ボク、ずっとずっと君に言いたかったことがあるの。」
ディアンヌは顔を真っ赤にしながら、相変わらず布団で顔を半分隠しながら続けた。
「ハーレクインと初めて会った時から、ボクの人生が変わったの。大げさじゃないよ。一人で生きていくのが当たり前だったボクに、君は楽しいことも嬉しいことも、優しいことも、誰かといることの温かさも、全部教えてくれた。でも、同時に悲しい思いもたくさん知ったの。
忘れてた。その大切な思い出を、何もかも…。でも思い出したの。君を見ると、優しい気持ちになったり、嬉しくなったり、苦しくなったり…
こんな感情、君に出逢わなかったら、知らなかったよ。」
ディアンヌは、かくしていた顔をあげ、しっかりとキングをみつめた。
「ありがとう、キング。」
とびっきりの笑顔でディアンヌはそう言った。


キングは、自分の頬に、温かいものが一筋流れ落ちてくるのを感じた。
「ディアンヌ、オイラも、君にいいたいことあるんだ。」

キングは、優しくディアンヌを抱き寄せた。

ディアンヌは、キングの行動に身体中が熱くなる。



「好きだよ。ディアンヌ。ずっと昔から、君に言いたかった。」
「……。」

ずっとずっと待ち望んでいた言葉。

キングの告白に、言葉を返そうとするも、心臓の高鳴りがそれを邪魔した。


「ディアンヌは?」
「へ…?」
「ディアンヌは、オイラのこと好き?」
そう聞かれればますます顔が熱くなった。いつもより積極的な彼にドキドキがおさまらなかった。


「…好き…。キングが、好き。」
ディアンヌは、恥ずかしさのあまり、顔を見られたくなくて、かわりにキングを抱きしめ返した。

「ヤバい…オイラ、泣きそう。」
「もう、泣いてるじゃない。」
「あはは、ほんとだね…。」
二人で笑いあった。

しばらくして、離れると、恥ずかしそうにお互いの顔を見つめた。
二百年越しに、やっとお互いの気持ちが通じ合った二人。

どちらからともなく、その場の空気に流されるまま、二人は唇を重ねた。

恥ずかしさを誤魔化すため、笑いあった。



「取り込み中悪いんだが、もういいか?」
突然ドアの方から聞こえた声に二人はすごい勢いでそちらを見ると、団長とバンがにやにやと笑いながら二人を見ていた。
その後ろには無表情のゴウセルと、顔を真っ赤にしてあわあわしているエリザベスがいた。


その後、キレたキングを団長とバンが適当にあしらいながら
豚の帽子亭の夜が更けていった。

続きます!
<2016/10/13 16:04 ついんくる>消しゴム
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