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妖精王の罪 第11話



それから数日。
すっかり動けるようになったキングとディアンヌ。
またいつものように、団長達と修行をしたり、酒場の営業をこなしていた。

営業も一区切りつき、後片付けをしていたときだった。
「団長」
「おーキング。どーした?」
綺麗に洗われたグラスを拭きながら答えるメリオダス。
「話があるんだ。ちょっといいかい?」
「?」
特にお客もいなかったので、言われるままキングに着いて行き、お店の外に出た。
裏口へ回り、お店の周りの段差へと腰掛ける二人。

「話ってなんだ?」
いつになく深刻そうな顔をしているキング。
気になったメリオダスはすぐ話を切り出した。

「オイラ…ここを出たいんだ。」
「……ここって、豚の帽子亭からってことか?」
メリオダスがそう聞き返すと彼は黙って頷いた。
「なんでだ?」

「…この前、魔人族が森に入っただろ?
あの時、もしもオイラ達がこなかったら、いまごろ妖精王の森はまた魔人にのまれてしまったかもしれない…って思ったんだ。
一度森を出て、その間に、森も妹も親友も、何もかも失って…仲間からは妖精王を名乗る資格がないって言われた時もあってさ。」
彼の目はとても悲しそうだった。
「何も言い返せなかった。オイラは何も守れなかった。親友の苦しみにも気付けなかった。
王として最悪だ。
でも…それでも、もう二度と、森を失いたくないんだ。
罪ほろぼしだとか、何て言われたって構わない。もう一度、森に戻って、守りたいんだ。」

先程の悲しそうな彼の目は、もうすっかりと迷いのない目をしていた。
止めても無駄だろうな、とメリオダスは思った。
「しゃ〜ねぇ。お前が決めたことだ。俺には止める権利もない。」
メリオダスは立ち上がって空を見上げた。
「団長…」
「でも…」
くるっと振り返ってキングを見た。
「いつか必ず、お前の力を借りるときがくると思う。その時は、力を貸してくれ。団長命令だ!」
にししっと笑って、そう言った。
キングは自分勝手な決断を許してくれたことを深く感謝した。
「もちろんだよ。ありがとう、団長。」

「けどよ〜…。」
話を続ける団長。
「ん?」

「ディアンヌはどうすんだ?」
「………」
そう聞かれれば沈黙してしまうキング。
自分がいなくなれば、ディアンヌをまた悲しませてしまう。
けど、それでも…。

「それでも、オイラは森に戻るよ。ディアンヌのことは本当に大事だし、オイラだって離れたくはない。…でも、なんで守りたいものって一つじゃないんだろうね。どれも、諦めるわけにはいかないんだ。」
少し笑って、そう答えた。
「ディアンヌには、ちゃんと話すよ。もう黙っていなくなるなんてことはしないよ。」
「そうか。果たしてオッケーしてくれるのかね。」
メリオダスは、ディアンヌが泣きながら「行かないで!」とキングにすがる姿が容易に想像できて、思うず笑ってしまった。
「まぁその時は…なんとか説得するよ。」
キングも苦笑いで返す。
「あぁ。頑張れよ。」
そう言うと、二人はお店の中へと戻った。

その日は、いつも通り残りの営業も終えた。

最近のキングとディアンヌは、夕食を終えると、二人で手を繋いで散歩するのが日課になっていた。
涼しい夜風や、暗闇に光る星空、虫の音などが、とても穏やかで、とても幸せな時間なのだ。
今日も、ディアンヌがキングに声をかけた。
「キーング!お散歩いかない?」
彼女に満面の笑みでそう聞かれれば、断る理由などない。
「うん!行こう。」
二人でお店のドアから外へ出た。
キングが手を差し出すと、ディアンヌは嬉しそうにキングの手を掴んだ。

そして最近お気に入りの、少しだけ丘になっているところへ行き、草むらに寝そべった。
そこから眺める星空がとても綺麗なのだ。
「綺麗だね…。」
ディアンヌは夜空を眺めながらそう言った。
キングはその横顔を見ていた。
やっぱり、ディアンヌは可愛いな…とか思いながら。

「ねぇ、ディアンヌ。」
「なあに?」
キングは、緊張で声が震えそうになるのを必死でおさえた。
「オイラね…妖精王の森に帰ろうと思うんだ。」
そう言うと、二人の間にはしばし沈黙が流れ、夜風の音と遠くで虫の音が聞こえる音だけが響いた。
しばらくしてからディアンヌは起き上がり、キングを見て言った。
「どうして…?また、ボクを一人にするの?」
ディアンヌの声はか細く、震えていた。
キングも起き上がり、ディアンヌを見つめると、ディアンヌを優しく抱きしめた。
「ごめんよ、ディアンヌ…。出来れば、オイラも君とは離れたくない。何百年も、遠回りして、やっと今こうしてディアンヌを抱き締めることが出来るのに、それでも、また君を置いていくオイラを許してほしい。
オイラは、妖精王だから。あの森を、仲間を…守らなきゃいけないんだ。
でも、いつだってオイラは、君を想っているよ。昔も今もこれからも、ずっと、ディアンヌが好きだよ。」

ディアンヌは、キングの言葉に我慢していた涙がポロポロとこぼれ落ちた。

「なんとなく…わかってたよ。いつかキングは、森に帰っちゃうんじゃないか、って。
でも、やっぱり思うんだ。キミがボクだけのものならいいのにって。ただ、ずっと一緒にいたいだけなのに、キングはボクだけのものじゃないんだって、ずっと、わかってはいたけど、認めたくなかった。
でも…キングが守りたいもの、守らなきゃいけないって思うものがあるなら…それはボクが守りたいものでもあるんだ。

「ディアンヌ…」
「でも、でも…やっぱり寂しいよ。キングがいないと、ボク寂しいよ。だって、こんなに…キングが好きなんだもん。」
ディアンヌは泣きじゃくりながら手で涙を拭き取る。
「こんなに、好きにさせといて、またいなくなるなんて、本当にずるいよ。」
何と声をかけるべきかわからないキングは、ただただ彼女を抱き締めるしかなかった。

「だからね…」
「ボクも、妖精王の森に連れて行って?」

彼女の言葉に「えっ?」と思わず声が出た。
彼女を離し、顔を見つめると、ディアンヌは髪で顔を少し隠して、言葉を続けた。
「ボクも、妖精王の森で暮らしたい。そうすれば、キングは森にいれるし、ボクともずっと一緒にいれるでしょ?」
「けど…ディアンヌは、それでいいのかい?団長や、みんなとも、離れることになるんだよ?
それに、妖精王の森には、妖精しかいない。もしかしたら、巨人族の君が、そこで暮らすことをよく思わない者もいるかもしれない。」
「それでも…キングと離れるよりはマシだもん。」
即答で、ちょっとふてくされながらそう答えるディアンヌ。
キングはそんな彼女がどうしようもなく愛しく思えて、優しく笑って、再び彼女を抱きしめた。
「わかった。君がそう望むなら、団長と話してみよう。」
「ごめんね、ワガママで。」
「オイラのためのワガママなら、嬉しいよ。」
キングが笑うと、ディアンヌも笑った。
帰ろうか、とキングが立ち上がる。

「キング、大好きだよ。」

小さい声でディアンヌが言った。

「え?何か言った?」
「なんでもない!帰ろう!」

二人は店への道をゆっくりと歩いた。

続きます!
<2016/10/16 21:42 ついんくる>消しゴム
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