狐が泣く時に
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「ここに居るのはもう、疲れた」
ポツリと放った独り言が寂しく宙に消えていく。
ボロアパートの一室。
家具はきちんと整理されているものの、何処となく汚らしく、埃っぽい部屋。
それが、僕の家。
北川優一28歳。
確実にアラサーへと近づきつつある年齢。
21歳に処女作、“透明ポスト”を書き上げた。
見事その小説で新人賞を受賞し、華々しく作家人生が開いた、はずだった。
事が順調に進んだのは最初の1年だけ。
処女作に続いて二作目、“桜並木”を出版してからというもの、ストライキに陥ってしまった。
今まで住んでいたアパートの家賃が払えなくなり追い出され、友人の家を転々とした挙句、最終的な住まいがここ。
風呂なし築60年のボロアパート。
そこからはアルバイトをして何とか生活費を維持していた。
どれも酷くつまらないものだった。
そんなわけで、中途半端に今までの人生を見送って来た。
自分でもなぜアルバイトが続かないのかよくわかっていた。
人の下で働くのが僕は大の苦手なのだ。
それと、コミニュケーションが人と取れない、取りたくないという最悪な状態。
克服しなければ、何とかして仕事を見つけなければ、何度も何度もそう考え、チャレンジした。
しかし、どれも失敗に及んだ。
その度に僕は落胆し、悩んだ。
幾度も同じ事を繰り返し、同じ事を幾度も自分自身に自問した。
そして、答えが出た。
目上の人の機嫌を見て、それに合わせて。
見知らぬ人と必要以上会話をして。
僕にとってはそれは苦痛であり、ストレスでしかなかった。
そんな日々は、もう、終わりだ。
ここから出て行こう。
もっと僕に合った街が見つかるかもしれない。
何せこの世界だ。
人が少ない小さな田舎村などいくらでもあるだろう。
もしかしたら、そこで小説が全く新しいスタイルで書けるかもしれない。
もしかしたら、そこで将来のパートナーを見つけられるかもしれない。
そう考えたら期待で胸が膨らんだ。
まるで遠足の前日の小学生の様に。
どうして、僕はこんなにも良い策を思いつかなかったんだろう。
どうしたら良いかわからなくて悩んでいる昔の僕を嘲笑ってやりたい。
そうなったら、準備をしなければ。
新たな住まいを見つけ、荷物をまとめ、アパートの大家さんに挨拶をし、ここを出るのだ。
そのときの僕は、まるで何かに魂を与えられたかのように生き生きしていた。
そして引き寄せられていたのかもしれない。
あの島に。
ポツリと放った独り言が寂しく宙に消えていく。
ボロアパートの一室。
家具はきちんと整理されているものの、何処となく汚らしく、埃っぽい部屋。
それが、僕の家。
北川優一28歳。
確実にアラサーへと近づきつつある年齢。
21歳に処女作、“透明ポスト”を書き上げた。
見事その小説で新人賞を受賞し、華々しく作家人生が開いた、はずだった。
事が順調に進んだのは最初の1年だけ。
処女作に続いて二作目、“桜並木”を出版してからというもの、ストライキに陥ってしまった。
今まで住んでいたアパートの家賃が払えなくなり追い出され、友人の家を転々とした挙句、最終的な住まいがここ。
風呂なし築60年のボロアパート。
そこからはアルバイトをして何とか生活費を維持していた。
どれも酷くつまらないものだった。
そんなわけで、中途半端に今までの人生を見送って来た。
自分でもなぜアルバイトが続かないのかよくわかっていた。
人の下で働くのが僕は大の苦手なのだ。
それと、コミニュケーションが人と取れない、取りたくないという最悪な状態。
克服しなければ、何とかして仕事を見つけなければ、何度も何度もそう考え、チャレンジした。
しかし、どれも失敗に及んだ。
その度に僕は落胆し、悩んだ。
幾度も同じ事を繰り返し、同じ事を幾度も自分自身に自問した。
そして、答えが出た。
目上の人の機嫌を見て、それに合わせて。
見知らぬ人と必要以上会話をして。
僕にとってはそれは苦痛であり、ストレスでしかなかった。
そんな日々は、もう、終わりだ。
ここから出て行こう。
もっと僕に合った街が見つかるかもしれない。
何せこの世界だ。
人が少ない小さな田舎村などいくらでもあるだろう。
もしかしたら、そこで小説が全く新しいスタイルで書けるかもしれない。
もしかしたら、そこで将来のパートナーを見つけられるかもしれない。
そう考えたら期待で胸が膨らんだ。
まるで遠足の前日の小学生の様に。
どうして、僕はこんなにも良い策を思いつかなかったんだろう。
どうしたら良いかわからなくて悩んでいる昔の僕を嘲笑ってやりたい。
そうなったら、準備をしなければ。
新たな住まいを見つけ、荷物をまとめ、アパートの大家さんに挨拶をし、ここを出るのだ。
そのときの僕は、まるで何かに魂を与えられたかのように生き生きしていた。
そして引き寄せられていたのかもしれない。
あの島に。
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