白と黒の駒が盤上を舞う。
涙さんの白きクイーンが僕を殺した。
「チェックメイト。君なら終わらせてくれるかと思ってたのに、駄目だったね」
「……なんであんなこと言ったんです? いつか本当に死にますよ」
「ハハッ、確かに。でもいいんだよ、死のうと思ってたし、これはこれで面白い」
「意味深です。しかも不謹慎」
「そう? でもさ、スリリングだろ? 好きなんだよそういうの、ジェットコースターとかもね」
命とアトラクションを同じに見ちゃ終わっているだろ。
「あと、僕に負けた人の態度とか」
「………今の僕みたいなのですか」
「違う違う、奴等はこう言うんだよ。"お前が死ぬと言うから手加減してやった"ってね。人間の闇が見える」
涙さんの人を哀れむ様な顔は、僕を引き込んで行く。
雨が、小さな世界を壊して行く音がした。
昔からあまり好まない。
「そろそろ、帰ります。雨降ってるし」
「送っていこうか?」
「結構です、大丈夫です、お気になさらず」
「うわ、冷たいな。僕、そう言われると燃えるんだけど」
「M ですね。チェスの王様が」
「王様が送ってく、と言っているのだ」
雨音は僕の声を掻き消した。
