「あ、あのさ、お前・・・」
「なんだ。」
「お前・・・」
「言いたいことがあるならさっさと言え。」
「・・・分かったよ。じゃあストレートに聞く。お前、どこかのお偉いさんの関係者か?」
「・・・なぜそれをいきなり?」
「さっき聞きこんできた衛士が首にかけてた紋章や、似顔絵が描かれた紙にあった紋章。それがお前が首にかけているやつの紋章と同じだったから。なんとなくそういうやつの関係者かなと。勘だけどな。」
「・・・・。」
「お前とは会ってまだ少ししか経ってないけど、まだ自己紹介をしてない上にまともにされてもないからな。」
しばらくの沈黙が続いた。
すると少年はため息をつき、こめかみの辺りをポリポリと人差し指でかきながら
「・・・は~、やっぱり秘密は隠し通せないものだな。」
少年は口を開いた。
「そうそう、秘密なんて隠しててもすぐにバレるもんだぜ」
「・・わかった。改めて言おう。俺はセシル・フロセス。お前の考えた通り、ここの領主の息子だよ。」
「え、え、お、お前、ここの領主の息子・・・?」
予想の斜め上をいく答えが返ってきたので少し驚いた。
「なんだ、お前自分で格好つけながら自慢げに話してたじゃないか。」
この身長差で下から言われるとなんか不思議な感じだ。
「いや、せいぜいこの街の富豪の息子ぐらいかと・・・。でも、まさか領主の息子だったとは・・・。」
「われら一族は代々このソルトレイクを治めてきた。まあ俺はその8代目とかいってたな。」
「・・そこは曖昧なんだな。ていうかここってソルトレイクっていうんだ。」
「は?お前この街に来て名前も知らなかったのか。」
「へー、ここってソルトレイクっていうんだ。」
言われてみれば、ここはどこかなんて考えてもいなかった。
「もういいだろ。・・・さてと、もうこんな時間か。そろそろ寝床をさがしに行くか。」
「え、もうそんな時間?」
「・・・。お前、時計塔の時計を見れば時間なんてすぐ分かるだろ。」
少年の指さす先には市場を越えた遠く向こうに高くそびえたつ時計塔があった。
時計は午後5時30分過ぎぐらいをさしていた。
そういえば、市場へ曲がったあの交差点。右に曲がると時計塔へとつながってたな。
「あ、本当だ。もうこんな時間。」
だけどまだ太陽が出ているってことは、向こうの世界でいう夏みたいなもんなのか。
腕時計をふと見ると時刻は20時34分をさしていた。
狂ってんな・・・後で直しとこう。
「行くぞ。ついてこい。」
「あ、はい・・。」
そう言うと、少年はとっとと行ってしまった。
っていうか、寝床を探しに行くって・・・どういうことだ?
しばらく少年の横をついていっていた。
ただ、無言っていうのがなんか気まずい。
・・・なんか話そうかな・・・。
「あー、そうだ。お前、魔法使える?」
「魔法?・・・ああ、まだ使えない。」
「・・・まだ?」
「ああ。魔法ってったって誰でも使えるわけじゃない。まず魔法を使うには年齢制限がある。お前、今何歳だ?」
「15・・・だけど?」
「それじゃあお前は使える権利があるな。魔法を使ってもいいのは15からだ。」
「へー、魔法にも年齢制限があるんだ。」
「そして許可も必要。」
「許可?」
「指定された場所での訓練と試験の合格。これらをクリアしてやっと魔法使いになれる。」
「ふーん、誰でもなれるってわけじゃないんだな。」
「ある程度の才能も必要だしな。・・・お前、なんか得意なものあるか?」
「得意・・・あ、そうそう。俺一応こう見えても剣道習ってんだぜ。」
「け・・・んどう?」
あ、そうか。剣道っていっても分からないのか。異世界だってこと忘れてた。
「まあようするに剣術やってるってわけ。」
「・・・お前、魔法使いのこと聞いておきながら、勇者志望か?」
「え、この世界勇者なんていう職業あんの⁉まじ‼」
「・・・言ってることがイマイチ理解できないが・・・まあ、あるぞ。」
マジか・・・本当、異世界って感じだな。ていうか、どちらかといえばもはやゲームの世界。
「・・・さて、着いたぞ。ここが今日の寝床だ。」
そうこう話しているうちにもう着いたようだ。
どうやらここは街はずれの郊外で・・・って、え・・・
「ここで・・・寝るの?」
「・・・そうだが。何か?」
少年が寝床といって案内したのは河原だった。
「あ、寝るのは橋の下な。」
・・・どうやら本当に河原で寝るようだ。
「・・・マジか・・・。もうちょっと・・・マシな所はなかったのかな?」
「あ、飯はそこらへんに転がってるやつを食え。」
・・・無視かよ・・・。
確かに河原には市場で見かけたリンゴみたいなやつがゴロゴロ転がっている。
「え、地面に落ちたやつ食うの・・?おごってくれるんじゃなかったの?」
「お前は俺が飯をやるってことを条件にOKしたはずだ。俺は一言もおごると言ってないぞ。」
「な、なんて理屈だ・・・。」
「それに俺は文無しだしな。もともと俺はこうするつもりだったし。」
確かにおごってやるとは言ってないけど・・・。
いつのまにか日は傾き、辺りはすっかり夕方になっていた。
見上げると、空は向こうの世界と何一つ変わらず橙色に染まっている。
・・・もう夕方か・・・。
「そういえばお前、領主の息子だっていうのになんで逃げ隠れする必要があるんだ?っていうかよくこんな場所知ってるな。」
「・・・それは・・・。・・・俺は、家出したんだよ。今日で二日目。あそこにいてもつまらないだけだし。」
「・・・。」
「・・前もしたことがあってな。それでこの場所を知ってるってわけ。結構いい場所だろ。雨も当たらない芝生が生えたいい寝床があって、食料が転がってる。」
「・・・なんで大事な商品が転がってんだ?」
「ここで売りものにならない不揃いのやつがここに捨てられるのさ。本来はダメなんだけどな。」
「ふーん・・・」
俺はあえて家出した理由を少年に聞かなかった。
きっとコイツにも何かしら事情があるんだろう。
・・・コイツの気持ちも分からないでもないし。
リンゴみたいな黄緑色のやつを1つ拾い、川の水で洗った後一口食べてみた。
「ってすっぱ‼」
口いっぱいにレモンみたいな酸っぱさが広がった。
「おい、そのリンガ、まだ完熟してないぞ。」
「え、どんなやつが完熟なの?」
「そうだな・・・例えばこんなやつとか。」
「そ、そうか。じゃあ今度こそ。」
少年から受け取り、口元に運んだ。
「・・・。いや、これ明らかに熟してないだろ。」
俺が食べてしまったのは緑色のやつだった。
「プ・・・クスクス・・・」
横を振り向くと、少年はお腹に片手をあてながら笑っていた。
「お前・・・はめたな‼」
「ハハハッ、お前ホント面白いな‼ハハハッ、緑色のやつが完熟してるわけないだろ。」
「・・・‼」
夜も近い郊外の河原に少年の笑い声は響いていた。
それにつられて俺も笑ってしまった。
異世界召喚1日目。
現実世界から一緒に召喚されたスクールバッグと傘を持ちながら、服装は制服のまま。
俺はこうして不思議な家出少年と過ごした。
「なんだ。」
「お前・・・」
「言いたいことがあるならさっさと言え。」
「・・・分かったよ。じゃあストレートに聞く。お前、どこかのお偉いさんの関係者か?」
「・・・なぜそれをいきなり?」
「さっき聞きこんできた衛士が首にかけてた紋章や、似顔絵が描かれた紙にあった紋章。それがお前が首にかけているやつの紋章と同じだったから。なんとなくそういうやつの関係者かなと。勘だけどな。」
「・・・・。」
「お前とは会ってまだ少ししか経ってないけど、まだ自己紹介をしてない上にまともにされてもないからな。」
しばらくの沈黙が続いた。
すると少年はため息をつき、こめかみの辺りをポリポリと人差し指でかきながら
「・・・は~、やっぱり秘密は隠し通せないものだな。」
少年は口を開いた。
「そうそう、秘密なんて隠しててもすぐにバレるもんだぜ」
「・・わかった。改めて言おう。俺はセシル・フロセス。お前の考えた通り、ここの領主の息子だよ。」
「え、え、お、お前、ここの領主の息子・・・?」
予想の斜め上をいく答えが返ってきたので少し驚いた。
「なんだ、お前自分で格好つけながら自慢げに話してたじゃないか。」
この身長差で下から言われるとなんか不思議な感じだ。
「いや、せいぜいこの街の富豪の息子ぐらいかと・・・。でも、まさか領主の息子だったとは・・・。」
「われら一族は代々このソルトレイクを治めてきた。まあ俺はその8代目とかいってたな。」
「・・そこは曖昧なんだな。ていうかここってソルトレイクっていうんだ。」
「は?お前この街に来て名前も知らなかったのか。」
「へー、ここってソルトレイクっていうんだ。」
言われてみれば、ここはどこかなんて考えてもいなかった。
「もういいだろ。・・・さてと、もうこんな時間か。そろそろ寝床をさがしに行くか。」
「え、もうそんな時間?」
「・・・。お前、時計塔の時計を見れば時間なんてすぐ分かるだろ。」
少年の指さす先には市場を越えた遠く向こうに高くそびえたつ時計塔があった。
時計は午後5時30分過ぎぐらいをさしていた。
そういえば、市場へ曲がったあの交差点。右に曲がると時計塔へとつながってたな。
「あ、本当だ。もうこんな時間。」
だけどまだ太陽が出ているってことは、向こうの世界でいう夏みたいなもんなのか。
腕時計をふと見ると時刻は20時34分をさしていた。
狂ってんな・・・後で直しとこう。
「行くぞ。ついてこい。」
「あ、はい・・。」
そう言うと、少年はとっとと行ってしまった。
っていうか、寝床を探しに行くって・・・どういうことだ?
しばらく少年の横をついていっていた。
ただ、無言っていうのがなんか気まずい。
・・・なんか話そうかな・・・。
「あー、そうだ。お前、魔法使える?」
「魔法?・・・ああ、まだ使えない。」
「・・・まだ?」
「ああ。魔法ってったって誰でも使えるわけじゃない。まず魔法を使うには年齢制限がある。お前、今何歳だ?」
「15・・・だけど?」
「それじゃあお前は使える権利があるな。魔法を使ってもいいのは15からだ。」
「へー、魔法にも年齢制限があるんだ。」
「そして許可も必要。」
「許可?」
「指定された場所での訓練と試験の合格。これらをクリアしてやっと魔法使いになれる。」
「ふーん、誰でもなれるってわけじゃないんだな。」
「ある程度の才能も必要だしな。・・・お前、なんか得意なものあるか?」
「得意・・・あ、そうそう。俺一応こう見えても剣道習ってんだぜ。」
「け・・・んどう?」
あ、そうか。剣道っていっても分からないのか。異世界だってこと忘れてた。
「まあようするに剣術やってるってわけ。」
「・・・お前、魔法使いのこと聞いておきながら、勇者志望か?」
「え、この世界勇者なんていう職業あんの⁉まじ‼」
「・・・言ってることがイマイチ理解できないが・・・まあ、あるぞ。」
マジか・・・本当、異世界って感じだな。ていうか、どちらかといえばもはやゲームの世界。
「・・・さて、着いたぞ。ここが今日の寝床だ。」
そうこう話しているうちにもう着いたようだ。
どうやらここは街はずれの郊外で・・・って、え・・・
「ここで・・・寝るの?」
「・・・そうだが。何か?」
少年が寝床といって案内したのは河原だった。
「あ、寝るのは橋の下な。」
・・・どうやら本当に河原で寝るようだ。
「・・・マジか・・・。もうちょっと・・・マシな所はなかったのかな?」
「あ、飯はそこらへんに転がってるやつを食え。」
・・・無視かよ・・・。
確かに河原には市場で見かけたリンゴみたいなやつがゴロゴロ転がっている。
「え、地面に落ちたやつ食うの・・?おごってくれるんじゃなかったの?」
「お前は俺が飯をやるってことを条件にOKしたはずだ。俺は一言もおごると言ってないぞ。」
「な、なんて理屈だ・・・。」
「それに俺は文無しだしな。もともと俺はこうするつもりだったし。」
確かにおごってやるとは言ってないけど・・・。
いつのまにか日は傾き、辺りはすっかり夕方になっていた。
見上げると、空は向こうの世界と何一つ変わらず橙色に染まっている。
・・・もう夕方か・・・。
「そういえばお前、領主の息子だっていうのになんで逃げ隠れする必要があるんだ?っていうかよくこんな場所知ってるな。」
「・・・それは・・・。・・・俺は、家出したんだよ。今日で二日目。あそこにいてもつまらないだけだし。」
「・・・。」
「・・前もしたことがあってな。それでこの場所を知ってるってわけ。結構いい場所だろ。雨も当たらない芝生が生えたいい寝床があって、食料が転がってる。」
「・・・なんで大事な商品が転がってんだ?」
「ここで売りものにならない不揃いのやつがここに捨てられるのさ。本来はダメなんだけどな。」
「ふーん・・・」
俺はあえて家出した理由を少年に聞かなかった。
きっとコイツにも何かしら事情があるんだろう。
・・・コイツの気持ちも分からないでもないし。
リンゴみたいな黄緑色のやつを1つ拾い、川の水で洗った後一口食べてみた。
「ってすっぱ‼」
口いっぱいにレモンみたいな酸っぱさが広がった。
「おい、そのリンガ、まだ完熟してないぞ。」
「え、どんなやつが完熟なの?」
「そうだな・・・例えばこんなやつとか。」
「そ、そうか。じゃあ今度こそ。」
少年から受け取り、口元に運んだ。
「・・・。いや、これ明らかに熟してないだろ。」
俺が食べてしまったのは緑色のやつだった。
「プ・・・クスクス・・・」
横を振り向くと、少年はお腹に片手をあてながら笑っていた。
「お前・・・はめたな‼」
「ハハハッ、お前ホント面白いな‼ハハハッ、緑色のやつが完熟してるわけないだろ。」
「・・・‼」
夜も近い郊外の河原に少年の笑い声は響いていた。
それにつられて俺も笑ってしまった。
異世界召喚1日目。
現実世界から一緒に召喚されたスクールバッグと傘を持ちながら、服装は制服のまま。
俺はこうして不思議な家出少年と過ごした。
