最終話 誰もが幸せになれますように
あれからいったいどのくらい眠ったのだろう。目が覚めた時、アオリは見知らぬベッドの上にいた。おそらく王宮のどこかなのだろう、とぼんやりする頭で考える。すると、部屋の扉が開いた。
「あっ!アオ、起きたのね!よかった!!」
エリルは起き上がろうとしたアオリに抱きついた。耳元で鼻をすする音が聞こえる。きっと泣いているのだろう。
「どうして!無茶はしないでって言ったのに…………。どれだけの人がどれだけ心配したと思ってるの!?」
エリルはさらに強い力で抱きしめた。声を聞きつけたのだろう、国王やアクたちもぞろぞろとやって来た。アクも、アオリが起きているのを見ると、力強く抱きしめた。
「ばか、無茶するな…………」
「ごめん…………なさい。」
それ以外言えることがなかった。どれだけ心配をかけたのか。感じるたびに胸が痛くなった。
アオリの容態はと言うと、腹部に受けた傷は残るものの、すっかり治療も終わり、体力も回復していた。それはそうだ。アオリは三日間眠り続けていた。
エリルが少しずつわけてくれていたこともあり、回復は早かった。
久し振りの食事を取り、普通に元気なのを見て、帰っていいと判断された。しかし、帰る前に国王に呼ばれていた。母、ルリと父も一緒だ。
「アオリ殿。あなたは前にその力を使わないと言っていたが、それはしなくてもいい。あなたをこの王宮に閉じ込めて政治に利用などしない。だから、その力も含めたアオリ殿として、普通に幸せになってもらいたい。」
「…………わかりました。ありがとうございます。お世話になりました。」
アオリは深々と頭を下げると、王室を出た。
「アオリ、頑張ったわね。」
「えっ…………」
不意に、母から誉められて動揺した。母と話すのも久し振りだったが、誉められるのはもっと久し振りだった。
「これからは、あなたが行きたい道を自分で選びなさい。どうやらいいお相手もいるようだし?」
「えっ…………。い、いやアクは…………」
そう言おうとした瞬間、壁にもたれているアクの姿が目に入った。
「アクは…………何?」
「あっ、えっと…………」
アクはアオリの両親の前に立った。
「僕、アクっていいます。雷国の者です。少し、お話いいですか?」
父と母は顔を見合わせた。なんとなく話の内容はわかったようだ。
「アオリを、お嬢さんを僕にください!」
アクは頭を下げた。今までにないくらい深々と。アオリは目を見開いた。
(まだ…私のこと好きでいてくれんだ…。)
「私達はもちろんいいわよ。アオリをよろしくね、アクさん。」
アクの顔はすごく嬉しそうだった。
「でも、アオリにプロポーズのほうが先なんじゃない?」
あっ、とアクがアオリに向き直った。
アクはアオリの手を握った。
「アオリ、待たせてごめん。でもこれからはずっといるよ。アオリが僕のこと許してくれるなら、僕と結婚してくれる?」
顔が真っ赤になるのがわかった。親の前で恥ずかしい…………。でも、嬉しい。
「許すとかそんなこと。私だってアクが大好き!もう離れてやんないからね!」
アオリはアクの首に飛び付いた。アクに触れるの、いつ以来だろうか。ただ今が一番幸せだった。
アクのプロポーズから一ヶ月後。本来ならアオリが結婚、と言いたいところだかが、先に結婚式を挙げたのはエリルと王子だった。王宮での立派な結婚式は、アオリにも印象が強かった。今までで一番綺麗なエリルが、王子の隣に立っていた。
「なんか、エリーが遠い人になっちゃったな。」
泣き笑いのような顔になったかもしれない。
「ばかじゃん…………。双子だもん、誰より近いじゃん。」
エリルも泣き笑いのような顔でそう言った。
「次はアオの番だよ。ブーケ受け取って。」
「ありがとう………。エリー、幸せになってね。」
王宮での豪華な結婚式から数日後。アオリとアクも結婚式を挙げた。アオリの両親は、二人の娘を一度に嫁に送り出して大忙しだ。
式は無事に行われ、二人は多くの人に祝福された。アクの両親もこちらに引っ越して来て、挨拶をして以来会うことも多かった。
アオリもエリルも、あの日以来力を使っていない。巫女の力は使いようによっては武器になるのだ。例えそれが自分達にとって正義のためであっても。
「アオリ、ずっと一緒にいてよ。僕より先に死ぬのは許さないからね。」
「じゃ、死ぬ時は一緒だね。私を置いていくとか許さないもん。」
二人はまだまだ遠い未来を想像し、笑った。
「「大好きだよ!」」
それから十年後。
「お母様ぁ~お父様が起きないよぉ。」
アオリに似た小さな少女は、布団に横たわったアクをポンポン叩いた。
「こら、やめなさいシラン。アクは昨日遅くまでお仕事してたのよ。そっとしといてあげなさい。」
アオリは、もうすぐ五歳になる娘を抱き上げると、軽く頭を撫でた。
遥か昔より伝わる伝説に新しい伝説が加えられて、その後何千年も語り継がれた。
それは国を守った双子の巫女の物語……。
END
あれからいったいどのくらい眠ったのだろう。目が覚めた時、アオリは見知らぬベッドの上にいた。おそらく王宮のどこかなのだろう、とぼんやりする頭で考える。すると、部屋の扉が開いた。
「あっ!アオ、起きたのね!よかった!!」
エリルは起き上がろうとしたアオリに抱きついた。耳元で鼻をすする音が聞こえる。きっと泣いているのだろう。
「どうして!無茶はしないでって言ったのに…………。どれだけの人がどれだけ心配したと思ってるの!?」
エリルはさらに強い力で抱きしめた。声を聞きつけたのだろう、国王やアクたちもぞろぞろとやって来た。アクも、アオリが起きているのを見ると、力強く抱きしめた。
「ばか、無茶するな…………」
「ごめん…………なさい。」
それ以外言えることがなかった。どれだけ心配をかけたのか。感じるたびに胸が痛くなった。
アオリの容態はと言うと、腹部に受けた傷は残るものの、すっかり治療も終わり、体力も回復していた。それはそうだ。アオリは三日間眠り続けていた。
エリルが少しずつわけてくれていたこともあり、回復は早かった。
久し振りの食事を取り、普通に元気なのを見て、帰っていいと判断された。しかし、帰る前に国王に呼ばれていた。母、ルリと父も一緒だ。
「アオリ殿。あなたは前にその力を使わないと言っていたが、それはしなくてもいい。あなたをこの王宮に閉じ込めて政治に利用などしない。だから、その力も含めたアオリ殿として、普通に幸せになってもらいたい。」
「…………わかりました。ありがとうございます。お世話になりました。」
アオリは深々と頭を下げると、王室を出た。
「アオリ、頑張ったわね。」
「えっ…………」
不意に、母から誉められて動揺した。母と話すのも久し振りだったが、誉められるのはもっと久し振りだった。
「これからは、あなたが行きたい道を自分で選びなさい。どうやらいいお相手もいるようだし?」
「えっ…………。い、いやアクは…………」
そう言おうとした瞬間、壁にもたれているアクの姿が目に入った。
「アクは…………何?」
「あっ、えっと…………」
アクはアオリの両親の前に立った。
「僕、アクっていいます。雷国の者です。少し、お話いいですか?」
父と母は顔を見合わせた。なんとなく話の内容はわかったようだ。
「アオリを、お嬢さんを僕にください!」
アクは頭を下げた。今までにないくらい深々と。アオリは目を見開いた。
(まだ…私のこと好きでいてくれんだ…。)
「私達はもちろんいいわよ。アオリをよろしくね、アクさん。」
アクの顔はすごく嬉しそうだった。
「でも、アオリにプロポーズのほうが先なんじゃない?」
あっ、とアクがアオリに向き直った。
アクはアオリの手を握った。
「アオリ、待たせてごめん。でもこれからはずっといるよ。アオリが僕のこと許してくれるなら、僕と結婚してくれる?」
顔が真っ赤になるのがわかった。親の前で恥ずかしい…………。でも、嬉しい。
「許すとかそんなこと。私だってアクが大好き!もう離れてやんないからね!」
アオリはアクの首に飛び付いた。アクに触れるの、いつ以来だろうか。ただ今が一番幸せだった。
アクのプロポーズから一ヶ月後。本来ならアオリが結婚、と言いたいところだかが、先に結婚式を挙げたのはエリルと王子だった。王宮での立派な結婚式は、アオリにも印象が強かった。今までで一番綺麗なエリルが、王子の隣に立っていた。
「なんか、エリーが遠い人になっちゃったな。」
泣き笑いのような顔になったかもしれない。
「ばかじゃん…………。双子だもん、誰より近いじゃん。」
エリルも泣き笑いのような顔でそう言った。
「次はアオの番だよ。ブーケ受け取って。」
「ありがとう………。エリー、幸せになってね。」
王宮での豪華な結婚式から数日後。アオリとアクも結婚式を挙げた。アオリの両親は、二人の娘を一度に嫁に送り出して大忙しだ。
式は無事に行われ、二人は多くの人に祝福された。アクの両親もこちらに引っ越して来て、挨拶をして以来会うことも多かった。
アオリもエリルも、あの日以来力を使っていない。巫女の力は使いようによっては武器になるのだ。例えそれが自分達にとって正義のためであっても。
「アオリ、ずっと一緒にいてよ。僕より先に死ぬのは許さないからね。」
「じゃ、死ぬ時は一緒だね。私を置いていくとか許さないもん。」
二人はまだまだ遠い未来を想像し、笑った。
「「大好きだよ!」」
それから十年後。
「お母様ぁ~お父様が起きないよぉ。」
アオリに似た小さな少女は、布団に横たわったアクをポンポン叩いた。
「こら、やめなさいシラン。アクは昨日遅くまでお仕事してたのよ。そっとしといてあげなさい。」
アオリは、もうすぐ五歳になる娘を抱き上げると、軽く頭を撫でた。
遥か昔より伝わる伝説に新しい伝説が加えられて、その後何千年も語り継がれた。
それは国を守った双子の巫女の物語……。
END
