第五話 夕焼けの下で最後の幸せを
次の日、アオリはそわそわしながら待ち合わせ場所に向かった。川辺にはもうアクが来ていて、アオリにむかって手を振っていた。
「ごめんなさい!待たせてしまって。」
「いや、大丈夫。今来たところ。」
アオリは息を整えた。走ったせいでもあるが、一番は心をしずめるためだ。
「私もアクが好きです!会ったばかりだけどアクに何か感じたの!」
アオリは少し早口で言った。アクの顔をちらりと上目遣いで見た。すると、アオリがビックリするくらい真っ赤になっていた。
「ほ、本当ですか?僕達は両思いですか?
「二度も言わないから!」
アオリの照れは限界に達した。絞り出した勇気は一瞬で空っぽになった。
「アオリさん…………。大好きです。」
感動したようにアクの目は潤んでいる。
「名前!アオリでいいし、敬語もいらない。歳はアクのほうが上でしょ?」
アクはアオリよりも三歳年上だ。アクはその申し出をありがたく思った。自分からはなかなか踏み出せないことだったからだ。少しアオリとの距離感が近くなったと思った時、向こうから馬の足音が聞こえた。
「アク!隣街に行くから付いてこい!」
馬車に乗っていたのはカルトだった。普段は大きな声を出すことはないが、今日は少し離れたアクに聞こえるように声をかけてくれたのだ。
「かしこまりました!すぐ行きます!」
アクはアオリに向き直り、アオリのおでこに軽く口づけると、そのまま走り去ろうとした。
「アク!私明日誕生日なの!会えない?」
アクは足を止めて振り返った。
「ごめん!明日は帰りの準備で忙しい!」
そう言うと、そのままアクがカルト様と呼んでいた人が乗っている馬車に乗り込んだ。アオリは会えないと断られたショックと、もうそろそろ帰るのだということにショックを受け一人とぼとぼ屋敷へと帰った。
夜、アオリとエリルは明日に迫った誕生日パーティーの準備をしていた。貴族のパーティーは身内だけで行うものではなく、他家の貴族や王族に関わりのある人も呼ばれる。アオリとエリルはいつもより少し豪華なドレスを試着した。そして明日に備え早めに布団に入った。
誕生日を祝うかのような爽やかな朝だった。空には雲一つなく、暁の光が晴れ渡る空に広がる。いつもより少し早起きをしたエリルは、アオリの寝ている部屋へとこっそり近づいた。少しドアを開いて中を見ると、予想通りすやすやと眠っている。エリルはアオリの背後にまわると、大きな声でわっ!と叫んだ。予想通りアオリは飛び起きた。
「エリーっ!なにするの!」
いつもはボーッとしているアオリの目はすっかり開き、エリルの首を絞めんとするくらい揺らした。
「一番にアオに会いたかったんだもん!誕生日おめでとう。」
予想もしなかった。エリルが自分を愛してくれていることに触れる瞬間は、いつだって予想外なタイミングで予想外なことだった。
「うん、誕生日おめでとう。」
二人は笑った。
「早く着替えよう!」
エリルはしっかりした姉のように、アオリの腕を引っ張って布団から起こした。
アオリは淡い青色のクールなドレスを、エリルはピンクの少しふわりとしたレースのついたドレスに着替え、開場に向かった。パーティーが始まってからは挨拶まわりが大変で、休む暇もなかった。お祝いの品をもらっては礼を言い、もらっては礼を言いを繰り返した。そんなこんなドタバタしていると日が暮れていた。
「もう夕方なのか。」
パーティーが一段落つき、休憩がてらアクと会っていた川辺へと向かおうとした。すると、屋敷の門番に散歩に行くと告げて門を出た瞬間、近くから声とこちらに向かってくる足音が聞こえた。
「アク!」
目に入った人影に、思わず声をあげた。来れないと言っていたのに来てくれた。
そんな幸せで胸が熱くなりながら、アオリもアクにむかって走り出した。アクのほうがどんどん近づいて来て、あっという間に二人の手は繋がった。
「なんで!?来てくれたの?」
「無理言ってお願いした。誕生日って大切でしょ?」
きれていた息を整えた後、アクはアオリのドレスを見た。
「わぁ、ドレス似合ってる。綺麗だよ。」
アオリの顔がいっきに赤くなった。そんなことないし、と小さな声で呟いたが、内心凄く嬉しかった。
「これはプレゼントだよ。はい!」
小さな袋が渡された。開けてみるとネックレスが入っていた。華美すぎず、地味すぎない、アオリに似合ったネックレスだった。それをさっそく着けてみると、着ていたドレスに栄えとても綺麗だった。
「よかった、似合ってる。」
アクはアオリの頭をぽんぽんと撫でた。子供扱いみたいで嫌だったが、金縛りにあったみたいに嫌だと言えなかった。
凄くいい雰囲気が二人の間に流れていた。アオリは自然と満面の笑みで、アクもずっと微笑んでアオリを見ていた。
アオリがアクを見上げると、二人の距離は凄く近くなっていっきに顔が近くなった。アオリが目を瞑る間もなく、 アクの唇がアオリの唇に重なった。長いようで短い一瞬の間、頭の中にはアクしかなかった。離れてからは二人して真っ赤な顔で笑った。
「あー、もっと一緒にいたいけど帰らないと。カルト様が待ってるから。」
「そうだ、私も帰らないと。」
立ち上がったアオリの腕を掴むと、もう一度口づけた。
二人の離れたくない気持ちは重なった唇から伝わり、長い時間が流れた。時が止まればいいのに、と初めて思った。
「またね。」
まだ感触の残る唇は小さく呟いた。アクはアオリに大きく手を振ると、来たときみたいに走って帰って行った。時間を作って会いに来てくれているんだと言い聞かせ、アオリはアクが見えなくなるまで見送った。この後アクが向かう場所も知らずに…………。
次の日、アオリはそわそわしながら待ち合わせ場所に向かった。川辺にはもうアクが来ていて、アオリにむかって手を振っていた。
「ごめんなさい!待たせてしまって。」
「いや、大丈夫。今来たところ。」
アオリは息を整えた。走ったせいでもあるが、一番は心をしずめるためだ。
「私もアクが好きです!会ったばかりだけどアクに何か感じたの!」
アオリは少し早口で言った。アクの顔をちらりと上目遣いで見た。すると、アオリがビックリするくらい真っ赤になっていた。
「ほ、本当ですか?僕達は両思いですか?
「二度も言わないから!」
アオリの照れは限界に達した。絞り出した勇気は一瞬で空っぽになった。
「アオリさん…………。大好きです。」
感動したようにアクの目は潤んでいる。
「名前!アオリでいいし、敬語もいらない。歳はアクのほうが上でしょ?」
アクはアオリよりも三歳年上だ。アクはその申し出をありがたく思った。自分からはなかなか踏み出せないことだったからだ。少しアオリとの距離感が近くなったと思った時、向こうから馬の足音が聞こえた。
「アク!隣街に行くから付いてこい!」
馬車に乗っていたのはカルトだった。普段は大きな声を出すことはないが、今日は少し離れたアクに聞こえるように声をかけてくれたのだ。
「かしこまりました!すぐ行きます!」
アクはアオリに向き直り、アオリのおでこに軽く口づけると、そのまま走り去ろうとした。
「アク!私明日誕生日なの!会えない?」
アクは足を止めて振り返った。
「ごめん!明日は帰りの準備で忙しい!」
そう言うと、そのままアクがカルト様と呼んでいた人が乗っている馬車に乗り込んだ。アオリは会えないと断られたショックと、もうそろそろ帰るのだということにショックを受け一人とぼとぼ屋敷へと帰った。
夜、アオリとエリルは明日に迫った誕生日パーティーの準備をしていた。貴族のパーティーは身内だけで行うものではなく、他家の貴族や王族に関わりのある人も呼ばれる。アオリとエリルはいつもより少し豪華なドレスを試着した。そして明日に備え早めに布団に入った。
誕生日を祝うかのような爽やかな朝だった。空には雲一つなく、暁の光が晴れ渡る空に広がる。いつもより少し早起きをしたエリルは、アオリの寝ている部屋へとこっそり近づいた。少しドアを開いて中を見ると、予想通りすやすやと眠っている。エリルはアオリの背後にまわると、大きな声でわっ!と叫んだ。予想通りアオリは飛び起きた。
「エリーっ!なにするの!」
いつもはボーッとしているアオリの目はすっかり開き、エリルの首を絞めんとするくらい揺らした。
「一番にアオに会いたかったんだもん!誕生日おめでとう。」
予想もしなかった。エリルが自分を愛してくれていることに触れる瞬間は、いつだって予想外なタイミングで予想外なことだった。
「うん、誕生日おめでとう。」
二人は笑った。
「早く着替えよう!」
エリルはしっかりした姉のように、アオリの腕を引っ張って布団から起こした。
アオリは淡い青色のクールなドレスを、エリルはピンクの少しふわりとしたレースのついたドレスに着替え、開場に向かった。パーティーが始まってからは挨拶まわりが大変で、休む暇もなかった。お祝いの品をもらっては礼を言い、もらっては礼を言いを繰り返した。そんなこんなドタバタしていると日が暮れていた。
「もう夕方なのか。」
パーティーが一段落つき、休憩がてらアクと会っていた川辺へと向かおうとした。すると、屋敷の門番に散歩に行くと告げて門を出た瞬間、近くから声とこちらに向かってくる足音が聞こえた。
「アク!」
目に入った人影に、思わず声をあげた。来れないと言っていたのに来てくれた。
そんな幸せで胸が熱くなりながら、アオリもアクにむかって走り出した。アクのほうがどんどん近づいて来て、あっという間に二人の手は繋がった。
「なんで!?来てくれたの?」
「無理言ってお願いした。誕生日って大切でしょ?」
きれていた息を整えた後、アクはアオリのドレスを見た。
「わぁ、ドレス似合ってる。綺麗だよ。」
アオリの顔がいっきに赤くなった。そんなことないし、と小さな声で呟いたが、内心凄く嬉しかった。
「これはプレゼントだよ。はい!」
小さな袋が渡された。開けてみるとネックレスが入っていた。華美すぎず、地味すぎない、アオリに似合ったネックレスだった。それをさっそく着けてみると、着ていたドレスに栄えとても綺麗だった。
「よかった、似合ってる。」
アクはアオリの頭をぽんぽんと撫でた。子供扱いみたいで嫌だったが、金縛りにあったみたいに嫌だと言えなかった。
凄くいい雰囲気が二人の間に流れていた。アオリは自然と満面の笑みで、アクもずっと微笑んでアオリを見ていた。
アオリがアクを見上げると、二人の距離は凄く近くなっていっきに顔が近くなった。アオリが目を瞑る間もなく、 アクの唇がアオリの唇に重なった。長いようで短い一瞬の間、頭の中にはアクしかなかった。離れてからは二人して真っ赤な顔で笑った。
「あー、もっと一緒にいたいけど帰らないと。カルト様が待ってるから。」
「そうだ、私も帰らないと。」
立ち上がったアオリの腕を掴むと、もう一度口づけた。
二人の離れたくない気持ちは重なった唇から伝わり、長い時間が流れた。時が止まればいいのに、と初めて思った。
「またね。」
まだ感触の残る唇は小さく呟いた。アクはアオリに大きく手を振ると、来たときみたいに走って帰って行った。時間を作って会いに来てくれているんだと言い聞かせ、アオリはアクが見えなくなるまで見送った。この後アクが向かう場所も知らずに…………。
