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満月に祈る巫女


第七話 アオリの力
アクがアオリと別れてエリルを洞窟へ運んでいる途中、アオリはドキドキの止まらない状態では何も手につかなかった。しかしいつまでも横たわっているわけにもいかないので、夜風に当たろうと外へ出た。満月の月明かりで明かりがなくても外を歩けた。池の周辺までぶらぶらと来ると、アオリは夜空を見上げた。
その瞬間、ドクンッと心臓が踊った。いっきに力が抜けてその場に座り込んだ。
『お母様!絵本を読んで。』
『王家のパーティーとか面倒だな。』
『優秀なくせに鈍いんだから…………。』
頭の中をいろんな風景が流れていった。どれも見たことがある光景だった。
「これは…………もしかして過去?」
アオリはたどり着い答えを勘違いだとは思わなかった。自分は月読の巫女だ。力が覚醒したとしたら納得がいく。
「そうだ、エリ!」
エリルも同じなのではないかと思って走り出そうとした瞬間、頭に別の光景が一瞬で横切った。
『誰…………?』
そこにはエリルとアクがいた。アクはエリルをどこかへ運ぼうとしていた。
「エリー!」
アオリはエリルが誘拐されていると直感で感じた。アオリの勘は今まで外れたことがない。アオリは直ぐに走り出そうとしたが、足を止めた。どこに行けばいいのかわからなかったのだ。
「私の力が過去を見るものならば、出来るかもしれない。」
アオリは自分の勘を頼りに、たった今覚醒したばかりの力を使おうと集中力を高めた。
「アクの記憶を読み取れ!」
アオリが両手を広げると、周りに風が起きて吹き抜けた。
まるでその風に乗ってきたように、アオリの頭の中に記憶が流れ込んできた。
エリルを抱えて山を走るアクの姿を必死で追いかける。そこそこに力を使う技なのか、映像が乱れてきた。集中力をさらに集めると、アクが洞窟へと入って行くのが見えた。それを最後に映像は途絶え、アオリは方膝をついた。どうやら力をかなり使うものらしい。呼吸は使う前より乱れていた。
「洞窟に行かなきゃ!」
目的地が洞窟だとわかり、アオリはすぐに着替えをした。動きやすい服でないといけない。適当にラフな服を選んで着替えると、すぐさま屋敷を出た。家の者が心配しないように書き置きも残してある。
「アク…………。許さない!」
走りながら呟いた言葉は、地面に重く落ちた。貴族の姫とは思えぬ速さで走るアオリは、すでに山の中へと入っていた。
エリルを助けなきゃ、という思いと、アクがもしも自分を利用したのだとしたら、という怒りが混じり、速く洞窟へ行かなければという気持ちが、アオリの走るスピードを速くさせた。
走り続けて数十分。目的の洞窟が見え、アオリは飛び込むように入って行った。
「エリーを返してくれるかしら、アク。」
そう言ってずかずかとエリルに近づいた。
「エリー!大丈夫!?」
どこも怪我はなさそうだったが、元々体が弱いので一応のために聞いた。
「大丈夫よ、平気。ありがとうアオ。」
アオリはエリルの微笑みにつられほっと胸を撫で下ろすと、立ち上がりアクに向き直った。
「全てを説明して!どういうことなの!?」
アクはエリルに話したことを全て、アオリにも説明した。

<2016/06/16 17:15 小日向>消しゴム
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