−透視点−
昼休み、いつも一緒に過ごす人が見当たらない。
思い当たる場所を1人うろうろしていても、一向に見つからない。
どうしたものかと思いながら、教室へと戻る。
そこにも探し人は居らず、クラスメイトに尋ねることにした。
「あの、お聞きしたいのですが」
「えっ、どうしたの竹倉君?わたしで良ければ、何だって聞いて!好きな人のタイプとかぁ……」
「いや、お聞きしたいのはそういうことではなくて……」
途端に彼女の表情が冷めたものになった気がする。きっと気の所為だと信じたい。
こういう、ふとした仕草で相手の心情を無意識に読み取ってしまうのは、兄さんと似ているのかもしれない。
「……まぁ、いいのよ全然。で、聞きたいことってなぁに?」
「海斗、どこにいるか知りませんか?」
「ああ〜、辻見ね。今朝、染路さんと昼休みに体育館裏がどうとか言ってたけど……」
今朝の出来事を思い出すように、視線を斜め上へと向けながら彼女はそう言った。
「体育館裏、ですか?」
「うん。ちょっと今朝聞いただけだから確証は持てないんだけど……」
「分かりました。佐藤さん、ありがとうございました」
僕が礼を言えば、佐藤さんは顔をぱあっと輝かせた。
「どういたしまして!竹倉君、わたしの名前覚えてくれてたんだ!」
「クラスメイトの名前は覚えているのが当然では?」
「そうなんだけど……とにかくありがと!」
「は、はぁ……どういたしまして」
未だ興奮冷めやらぬ様子の佐藤さんに会釈をし、僕は体育館裏へと向かった。
鈍感だなぁ、とこれまで何度も言われた。
しかし、この状況が理解出来ないほどの脳みそではないと自負している。
「……これだけ近くにいたのに、気づかなかったんですね」
その点で言えば、やはり自分は鈍感なのだろう。
海斗と鳴海。最近は、僕と鳴海の1件からか、2人が話している姿も見なくなった。
それこそ、今朝鳴海が謝って来てくれたから、あの2人が話すことなんて不思議なことではない。
それでも、遠目から見て、今の2人の雰囲気は、恋仲のそれとしてしか捉えることが出来なかった。
自分の親友同士が付き合う。
それは、非常に喜ばしいことである。実際、僕の心情の半分はそれで埋まっている。
なのに、心の中で引っかかる事もあるのだ。
その感情がなんなのか、未だかつて経験したことのない感情は、自分の中の知識では見つけられない。
「……ってか透じゃん!こそこそしながら見てどしたの?」
「わっ⁉︎か、海斗⁉︎」
1人で考え込んでいた所為で、海斗が近づいて来たのにも気づかなかったようだ。
驚いた反応の僕に、海斗は逆に驚いたようだ。
そんな海斗の後ろには、気まずそうな雰囲気を醸し出している鳴海がいる。
「……鳴海、すみませんでした。僕も、やっと分かりました。鳴海があんなに感情的になった理由が」
「……は?」
まだピンと来ていない様子の鳴海。
「感情的に暴力までは奮いませんが……伝えられていなくてショックだったのも事実です。幼馴染に大切なことを伝えられなかった気持ち、やっと分かりました……だから、ごめんなさい」
「いや、さっきからアンタ、何を言ってる訳?別に、そんな重要なことでアンタに伝えてないことなんてないし」
暴力までは、の辺りで鳴海の拳がプルプルと震えていたのを海斗が必死で抑えていた。
海斗のフォローがなければ今頃僕はボロボロだろう。
「全然、隠さなくたって良いんですよ?2人とも」
「えっ、俺も関係してる系なの?その重要なことってのは」
海斗まで勘付いていなかったのか。
2人ともなんなのかを理解出来ていないというのはどうなんだろう。
こうなったら、僕から確信を突くとしよう。
「……2人、付き合ってるんですよね?」
数秒の間。言葉が届くのに時間差でもあるのだろうか。と思ったら、2人は同時に叫んだ。
「誰がコイツなんかと付き合うんだよ!!!!」
「誰がコイツなんかと付き合うのよ!!!!」
キィーン、と耳鳴りが鳴るほどの音量で、面白いほどのハモリ。
「え……2人、付き合ってるんじゃあ」
「何故そう思った⁉︎なんかデジャブだし!鈍感王子なのにそういう所は何故にアンテナ立ってんの⁉︎」
デジャブということは、前にも疑われたことがあるのだろうか。
そしてまた鈍感と言われてしまった。
「そうよ‼︎だいたい、コイツが告って来たところで秒殺で断るわよ⁉︎冗談でもやめなさいよ‼︎」
「それは傷つくな俺⁉︎」
「……ふふっ」
「な、何笑ってるのよアンタ……?」
意味不明だとも言いたげな視線をこちらに向ける2人。
「いやっ、また3人で話せるなんて思ったなくて……楽しくてっ」
僕の言葉を聞いて、海斗の口角が上がる。
「まぁ〜?透の留学だとか、鳴海が透をぶっ叩いたりした所為で全然この3人で話す機会なかったしなぁ〜?」
海斗の言い分で、僕と鳴海は俯く。
「……それでも、こうやって仲直り出来たなら問題ナッシング!じゃね?」
「……そうね。まぁ、留学の件を黙ってたことに関してはまだ許してないけど」
じっとりと、鳴海が僕を静かに睨む。
「そ、その件については本当に申し訳なく思っているので……」
必死の弁解。作り笑いもいいところだ。
鳴海は、わざとらしく溜息をつき、鼻を鳴らした。
「まぁ、許したげる。その代わり、いつ行くだとか、そういう情報はぜっったいに言うのよ⁉︎」
「はいぃ!!!!」
僕の、脅迫に対するような返事は、よく晴れた秋空へと響きわたった。
昼休み、いつも一緒に過ごす人が見当たらない。
思い当たる場所を1人うろうろしていても、一向に見つからない。
どうしたものかと思いながら、教室へと戻る。
そこにも探し人は居らず、クラスメイトに尋ねることにした。
「あの、お聞きしたいのですが」
「えっ、どうしたの竹倉君?わたしで良ければ、何だって聞いて!好きな人のタイプとかぁ……」
「いや、お聞きしたいのはそういうことではなくて……」
途端に彼女の表情が冷めたものになった気がする。きっと気の所為だと信じたい。
こういう、ふとした仕草で相手の心情を無意識に読み取ってしまうのは、兄さんと似ているのかもしれない。
「……まぁ、いいのよ全然。で、聞きたいことってなぁに?」
「海斗、どこにいるか知りませんか?」
「ああ〜、辻見ね。今朝、染路さんと昼休みに体育館裏がどうとか言ってたけど……」
今朝の出来事を思い出すように、視線を斜め上へと向けながら彼女はそう言った。
「体育館裏、ですか?」
「うん。ちょっと今朝聞いただけだから確証は持てないんだけど……」
「分かりました。佐藤さん、ありがとうございました」
僕が礼を言えば、佐藤さんは顔をぱあっと輝かせた。
「どういたしまして!竹倉君、わたしの名前覚えてくれてたんだ!」
「クラスメイトの名前は覚えているのが当然では?」
「そうなんだけど……とにかくありがと!」
「は、はぁ……どういたしまして」
未だ興奮冷めやらぬ様子の佐藤さんに会釈をし、僕は体育館裏へと向かった。
鈍感だなぁ、とこれまで何度も言われた。
しかし、この状況が理解出来ないほどの脳みそではないと自負している。
「……これだけ近くにいたのに、気づかなかったんですね」
その点で言えば、やはり自分は鈍感なのだろう。
海斗と鳴海。最近は、僕と鳴海の1件からか、2人が話している姿も見なくなった。
それこそ、今朝鳴海が謝って来てくれたから、あの2人が話すことなんて不思議なことではない。
それでも、遠目から見て、今の2人の雰囲気は、恋仲のそれとしてしか捉えることが出来なかった。
自分の親友同士が付き合う。
それは、非常に喜ばしいことである。実際、僕の心情の半分はそれで埋まっている。
なのに、心の中で引っかかる事もあるのだ。
その感情がなんなのか、未だかつて経験したことのない感情は、自分の中の知識では見つけられない。
「……ってか透じゃん!こそこそしながら見てどしたの?」
「わっ⁉︎か、海斗⁉︎」
1人で考え込んでいた所為で、海斗が近づいて来たのにも気づかなかったようだ。
驚いた反応の僕に、海斗は逆に驚いたようだ。
そんな海斗の後ろには、気まずそうな雰囲気を醸し出している鳴海がいる。
「……鳴海、すみませんでした。僕も、やっと分かりました。鳴海があんなに感情的になった理由が」
「……は?」
まだピンと来ていない様子の鳴海。
「感情的に暴力までは奮いませんが……伝えられていなくてショックだったのも事実です。幼馴染に大切なことを伝えられなかった気持ち、やっと分かりました……だから、ごめんなさい」
「いや、さっきからアンタ、何を言ってる訳?別に、そんな重要なことでアンタに伝えてないことなんてないし」
暴力までは、の辺りで鳴海の拳がプルプルと震えていたのを海斗が必死で抑えていた。
海斗のフォローがなければ今頃僕はボロボロだろう。
「全然、隠さなくたって良いんですよ?2人とも」
「えっ、俺も関係してる系なの?その重要なことってのは」
海斗まで勘付いていなかったのか。
2人ともなんなのかを理解出来ていないというのはどうなんだろう。
こうなったら、僕から確信を突くとしよう。
「……2人、付き合ってるんですよね?」
数秒の間。言葉が届くのに時間差でもあるのだろうか。と思ったら、2人は同時に叫んだ。
「誰がコイツなんかと付き合うんだよ!!!!」
「誰がコイツなんかと付き合うのよ!!!!」
キィーン、と耳鳴りが鳴るほどの音量で、面白いほどのハモリ。
「え……2人、付き合ってるんじゃあ」
「何故そう思った⁉︎なんかデジャブだし!鈍感王子なのにそういう所は何故にアンテナ立ってんの⁉︎」
デジャブということは、前にも疑われたことがあるのだろうか。
そしてまた鈍感と言われてしまった。
「そうよ‼︎だいたい、コイツが告って来たところで秒殺で断るわよ⁉︎冗談でもやめなさいよ‼︎」
「それは傷つくな俺⁉︎」
「……ふふっ」
「な、何笑ってるのよアンタ……?」
意味不明だとも言いたげな視線をこちらに向ける2人。
「いやっ、また3人で話せるなんて思ったなくて……楽しくてっ」
僕の言葉を聞いて、海斗の口角が上がる。
「まぁ〜?透の留学だとか、鳴海が透をぶっ叩いたりした所為で全然この3人で話す機会なかったしなぁ〜?」
海斗の言い分で、僕と鳴海は俯く。
「……それでも、こうやって仲直り出来たなら問題ナッシング!じゃね?」
「……そうね。まぁ、留学の件を黙ってたことに関してはまだ許してないけど」
じっとりと、鳴海が僕を静かに睨む。
「そ、その件については本当に申し訳なく思っているので……」
必死の弁解。作り笑いもいいところだ。
鳴海は、わざとらしく溜息をつき、鼻を鳴らした。
「まぁ、許したげる。その代わり、いつ行くだとか、そういう情報はぜっったいに言うのよ⁉︎」
「はいぃ!!!!」
僕の、脅迫に対するような返事は、よく晴れた秋空へと響きわたった。
